落語「池田の猪買い」の舞台を行く 桂米朝の噺、「池田の猪買い」(いけだのししかい)より
■原話「狩人」より 落噺笑富林(わらうはやし) 天保4年刊 林家正蔵作 北尾重政画
甲州辺の山にて、狩人山へ行き、猪を撃ち歩く。その後へ付き回り、猪を買ふ者あり。ある日、向ふの山の根にて、猪一疋(ぴき)を見付け、ぽんと放すやいなや、この猪倒れける。この鉄砲、猪の下腹をかすり向こうの山に当たる。臆病なる猪ゆへ、鉄砲にあたりたると思ひ、気絶したり。
・サゲの胴骨は、背骨や肋骨のことを言うが、度胸とか胆っ玉の意味もあり、いかにも臆病な猪にふさわしい。
■猪(いのしし);イノシシ(猪・豬、英名: boar 学名:Sus scrofa)は、鯨偶蹄目イノシシ科の一種。十二支のひとつ「亥」に肖せられる動物の1つであり、犬と同じくらい鼻が非常に敏感で神経質な動物である。本種の家畜化がブタである。落語にも多く取り上げられて、この「池田の猪買い」、「弥次郎」、「中村仲蔵」等があります。
■猪鍋(ししなべ);日本で獣肉食が表向き禁忌とされた時代も、山間部などでは「山鯨(やまくじら)」(肉の食感が鯨肉に似ているため)と称して食されていた。「薬喰い」の別名からもわかるように、滋養強壮の食材とされていた。白い脂肪に縁どられた赤いイノシシの肉は、切り分けて皿に盛った状態が牡丹の花のようであることから、「牡丹肉」とも言われる。また、鍋にすると馬肉は桜鍋、鹿肉はもみじ鍋といわれる。
左:ぼたん鍋 右:歌川広重「名所江戸百景」より
■冷え気(ひえき);今は冷え性のことですが、梅毒・淋病などの性病、特に淋病。古い演出では「セガレが患うてる」「リンゴ屋のヒョウスケでリンビョウ」などの軽いくすぐりがあるが、今は「淋病」という言葉で辞書を引けば分かるがので「冷え」と言ってぼやかしている。
・りんびょう【淋病・痳病】;淋菌によって起る尿道粘膜の炎症。主に性交によって伝染し、感染後2~3日で放尿時に痒感・疼痛を覚え、また、尿意促迫を起す。初めは粘液性、後には膿様の分泌物が尿と共に出て、その中に多数の淋菌が含まれる。女性では子宮・卵巣等の炎症に進展し、不妊の原因となる。淋疾。トリッペル。今は良い薬が有るので治るが、猪の肉ぐらいでは完治しない。
■灸(やいと。きゅう);漢方療法のひとつ。もぐさを肌の局部、経穴・灸穴にのせてこれに火を点じて焼き、その熱気によって病を治療すること。やいと。灸治。灸術。落語「強情灸」に詳しい。
■盆の窪(ぼんのくぼ);首の後ろ、うなじ゙の中央のくぼんでいるところ。ぼんのくど。ぼのくぼ。人体のツボですから、灸やもみほぐしたり、暖めたりすると、疲労や体調不良を治すことが出来ます。ただ、真っ下は脊椎ですから鍼は打ちません。
■大戸(おおど);表入口の左右に開く大きな戸。冠婚葬祭時に開放します。通常は、脇に潜り戸があって、そこから出入りします。大家(たいけ)の入口に造られる。
■300目(300め);三百匁(もんめ)。1匁は3.75gですから300匁なら1、125g。五百匁で1、875gになります。1貫の半分。
■大阪から池田まで歩いた人が居ます。インターネットで道筋を写真付きで公開しています。
道順地図。距離約26km。歩いて約6時間、小旅行です。大阪からの別天地で、阪急宝塚本線急行で26分。
■道順:ここ丼池(どぶいけ)から丼池筋を北に行くと突き当たるわ、丼池の北浜には橋が無いで、左に曲がって淀屋橋を渡るな、大江橋、蜆橋(しじみばし)を渡るとお初天神が有って、「紅卯」と言う寿司屋の看板がある。そこから真っ直ぐ北に行けば良い。十三(じゅうそう)の渡し、三国(みくに)の渡しを越えて服部の天神さんを通り抜けると岡町、ここを抜けると池田だ。
■蜆橋(しじみばし);蜆橋が掛かっていた蜆川が今はもう埋め立てられて無い。で、橋も無い。堂島川を渡って少しの所、北新地(きたのしんち)の南に蜆川の記念碑が建っています。
■紅卯(べにう);お初天神(露天神社=大阪市北区曽根崎二丁目)の西門、または演者によっては北門にあった寿司屋。今は無い。
■十三(じゅうそう)の渡し、三国(みくに)の渡し;どちらも現在渡しは無く、淀川に架かる十三大橋、神崎川に架かる新三国橋になっています。
■服部の天神さん;大阪府豊中市服部元町一丁目-2。少彦名命と菅原道真を主祭神として祀る。関西では「足の神様」として知られている。
■岡町(おかまち);豊中市岡町。阪急電鉄宝塚本線の岡町駅は大阪府豊中市中桜塚一丁目にある。大阪国際空港の東側の町。
■山猟師(やまりょうし);山で猟をして生計をたてている人。狩人。
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