落語「田能久」の舞台を行く 六代目三遊亭円生の噺、「田能久」(たのきゅう)より
■「日本昔話集成」に「田之久」の題で収録され、また高知県の民話には、この噺の原型となるものがあります。その他、全国に流布する「親孝行が長者となる伝説」の要素が加わっています。故人・宇井無愁氏の考証によれば、「田能」とは本来田楽のことで、田能久は村の鎮守の祭礼に、吉例のお神楽を奉納する田楽師だとか。ウワバミにいっぱい食わせる小道具も、したがって
噺のような芝居の衣装でなく、お神楽の面をいろいろに取り替えただけといいます。
■民話から;数少ない、特定の地方を舞台にした噺で、登場する地名はすべて実在のものです。
阿波・徳島は昔から芸能の盛んな土地柄で、阿波人形浄瑠璃の本場でもあります。
歌舞伎・文楽でよく上演される「傾城阿波鳴門」(けいせいあわのなると、通称「どんどろ」)の舞台になりました。
なお、四代目円蔵は、法華津峠を法月峠、鳥坂峠を戸坂峠としましたが、のちに弟子の六代目円生が、これを訂正しています。
■民話「田の久」
(秋田県東成瀬村)
■『田の久』という、昔話で、『子どもに語る日本の昔話1』 に載っている昔話です。
■日本昔話「たのきゅう」;映像付きで昔話が楽しめます。右図。 http://www.dailymotion.com/video/xgj6mg_0006-%E3%81%9F%E3%81%AE%E3%81%8D%E3%82%85%E3%81%86_creation
■阿波の国、徳島の在・田能村(あわのくに とくしまのざい たのうむら);徳島県徳島市?。田能村は現在存在しませんが、徳島市南の小松島市辺りにあったと思われる村。ご存じの方がいらしたら教えてください。
■伊予の宇和島(いよのうわじま);宇和島市は、四国の南西部、愛媛県の南部に位置する都市で、南予地方の中心都市。旧北宇和郡の一部と旧宇和島市の合併により発足。宇和島城を中心に発展した闘牛で有名な旧城下町。
■鳥坂峠(とさか とうげ);愛媛県大洲市と西予市の市境にある峠。標高470m。
写真:戸坂峠
■法華津峠(ほけつ とうげ);愛媛県の宇和島市と西予市との間に位置している標高436mの峠で、市境を形成している。峠越えの道の頃は宇和島と宇和とを隔てる難所であったが、現在はトンネルが開通し今日では道路(国道56号)、鉄道(JR予讃線)ともに整備されている。法花津峠と表記されることもある。
■カツラや衣装;現代では歌舞伎でもお芝居でも、専門のカツラ師や衣装係がいますが、当時は全て自分持ちで調製した。久兵衛さんも自分の物を風呂敷に包んで持って帰った。
左写真:島田髷は、根で束ねた髪を一度後ろへ折り曲げて結び「いち」を作った形が特長で、中でも「文金高島田」は、根の位置が最も高い髪型。和装婚礼において、最も格が高い花嫁の正式な髪型。
■ウワバミ;大きなヘビのこと。漢字では蟒蛇と書く。特にボア科のヘビを指す。伝説上の大蛇(おろち)を指すこともある。
大きなヘビを指す日本語としては、古代の「をろち(おろち)」に代わって15世紀頃から使われるようになった。
■狐七化けタヌキ八化け;化け狸(ばけだぬき)は、日本の古典や各地の民話・伝説に見られるタヌキの妖怪。
■百日カツラ(ひゃくにちかつら);歌舞伎の鬘の一。盗賊・囚人などに用い、月代の醜くのびたもの。歌舞伎では石川五右衛門の髪かたち。
右図:五右衛門の処刑 一陽斎豊国 画 『石川五右衛門と一子五郎市』
■石川五右衛門(いしかわごえもん);(生年不詳 - 文禄3年8月24日(1594年10月8日))は、安土桃山時代の盗賊の首長。文禄3年に捕えられ、京都三条河原で一子と共に煎り殺された。
従来その実在が疑問視されているが、イエズス会の宣教師の日記の中に、その人物の実在を思わせる記述がある。処刑記録も現存しておりその光景を当時の絵師が残してさえもいる。処刑の際に詠んだとされる辞世の句は有名。
■煙草のヤニ;ニコチン (nicotine) は、アルカロイドの一種の有毒物質である。揮発性がある無色の油状液体。主にタバコ属(ニコチアナ)の葉に含まれる天然由来の物質である。
即効性の非常に強い神経毒性を持つ。半数致死量は人で0.5mg~1.0mg/kgと猛毒で、その毒性は青酸カリの倍以上である。またニコチン自体に発癌性はないものの、代謝物であるニトロソアミンに発癌性が確認されている。
複数回の摂取によりニコチン依存症を発症させる。WHO世界保健機関は「ニコチンはヘロインやコカインと同程度に高い依存性がある」と発表している。ほぼ全ての生物に対して毒性を発揮するため、殺虫などの用途で使用されている。しかし人間に対しても毒性を発揮するため、昆虫などに対してのみ選択的に毒性を発揮するよう改良されたネオニコチノイドなどが開発され使用されるようになった。
■柿渋(かきしぶ);渋柿の未熟果を擦り潰して搾汁して、発酵させ濾過したものを「柿渋(かきしぶ)」と言います。柿渋液の中に含まれる「柿タンニン」には防水、防腐、防虫効果があり、塗布することで効果を発揮します。柿タンニンには、蛋白質を凝縮させる効果もあり、古来から火傷の治療薬や、マムシの蛋白毒の解毒剤としても使われていました。人間への利用価値は高いのですが、毒性は認められません。しかし、ウワバミには毒性を発揮するのでしょう。
■四斗樽(しとだる);1升瓶の中身40本分が入る樽。通常日本酒を入れる樽に使われる。
■一万両(いちまんりょう);一生涯使い切れない大金ということ。これで心配なしに芝居三昧になれます。
右写真:千両箱。江戸東京博物館蔵
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