落語「酒の粕」の舞台を行く 二代目露乃五郎(二代目露の五郎兵衛)の噺、「酒の粕」(さけのかす)より
■二代目露の五郎兵衛(つゆのごろべえ);(1932年3月5日-
2009年3月30日)は上方落語の名跡で初代は京落語(上方落語)の祖とされる。多臓器不全のため77歳で死去。 来歴:祖父母が京都市下賀茂の映画撮影所の裏で芝居や舞踊の稽古場を営んでいた縁で子役で1938年12月の7歳で羅門光三郎主演の「孫悟空一走万里の巻」に出演。 その後を端役などで映画に出演。
後に中国に渡り、中国にて終戦を迎える。1946年に京都に家族共々引き揚げた。同年に生活の糧を得る為に芦乃家雁玉の主宰する「コロッケ劇団」に所属し地方を巡業や京都の富貴にて前座修行する。1947年11月、戎橋松竹の楽屋で二代目桂春団治にスカウトされる形で、まずは芦乃家一春を名乗り、その後正式に入門して春坊を名乗った。1959年、上方落語協会に入会し、松竹芸能に所属。道頓堀角座等に出演した。1960年10月、二代目桂小春団治を襲名。 千日劇場の「お笑いとんち袋」(関西テレビ、三代目桂米朝司会)での名回答者として活躍。
1967年4月、吉本興業に移籍。
1968年4月に吉本側から改名を促され、上方(京都)落語の祖・露の五郎兵衛の流れを汲む二代目露乃五郎を襲名した。1985年、文化庁芸術祭賞受賞。1987年に漢字表記を「露の五郎」に改める。若い頃から東京の落語界との交流を持ち、二代目三遊亭百生に私淑し、怪談噺大家・八代目林家正蔵(後の林家彦六)からも、いくつかの噺をもらっている。
また、落語協会の客分となり、定期的に東京の寄席に出演していた時期もある。
■酒粕(さけかす、酒糟);日本酒などのもろみを、圧搾した後に残る白色の固形物のことである。
酒米を醸造すると重量比で25%ほどの酒粕が取り出され、その成分は日本食品標準成分表によると、水分51%・炭水化物23%・蛋白質13%・脂質・灰分となっており、他にもペプチド・アミノ酸・ビタミン・酵母などが含まれているので、栄養素に富んだ食品としての価値が見直されている。1975年以降、年々、日本酒の生産量が減少していることと、大手を中心に一部の日本酒メーカーが高熱液化仕込み(高温糖化法)を採り入れていて液化粕になり産業廃棄物として処理されることから、副産物である酒粕も流通量が減少傾向にある。2013年7月~2014年6月までの産出量は41906トン弱。2014年7月~2015年6月までの推定産出量は41360トンである(食料新聞より)。
味醂のもろみから取れる味醂粕(こぼれ梅)はもち米を含むことから風味が異なり、焼酎のもろみから取れる焼酎粕はクエン酸を多量に含むので酸味を有する。
酒粕の種類;
酒粕はエタノールが含まれているので、腐敗しにくい。ただし、含まれる酵素により熟成が進み、また、糖分とアミノ酸がメイラード反応*し、温度、時間に比例し、白色→黄色→ピンク色→褐色→焦げ茶色→黒色となる。 漬物用酒粕は4か月~1年程熟成させた酒粕を、酢原料酒粕は1~7年熟成させた酒粕を使用するのが一般的である。 市販の酒粕商品は、保存方法を「要冷蔵保存」あるいは「直射日光、高温多湿を避け、涼しいところでの保存」を記載している。又、熟成に伴い、茶色等の着色や軟化など風味が変化していくことを記載し、この変化を抑えたい場合は冷蔵庫あるいは冷凍庫での保存を勧める旨を表示している商品が多い。-18℃以下であれば3年間以上保存しても品質が大きく劣化することはない。また、熟成の過程でアミノ酸の一種・チロシンが結晶化し表面に白い斑点状のものが現れることがある。 しぼりたては香りは豊かだが、やや硬く、味が薄いが、1週間ほど熟成させると香りは薄まるが、しっとりと軟らかくなり、味が出てくる。
■この噺は与太郎話のマクラで使われる小話です。今回も時間の半分以上は、酒の飲み方や上戸下戸の話、悪酔いしたときの醜態、など酒にまつわる話しをして、お客さんを笑わせています。
「赤い顔しているがどうしたんだ」、「そこで、酒粕食べて、酔っぱらっちゃった」、「よせよ、イイ若い者が。そんな時は『酒を飲んだんだ』と言え。威勢がイイだろう」。
■武蔵野(むさしの);大杯。大盃のこと言ぅねやなぁ。あの東京、江戸や。武蔵野っちゅうたら
江戸時代のあの時分からやなぁ、こぉ広いひろい野原やったんやて「野ぉが 見ぃつくせん」ちゅうんで「呑み尽くせん」、武蔵野とこぉ言ぅねん。(噺から)。
■アテ;酒の肴
■喜ぃ公(きいこう);喜ぃさん。江戸落語に登場する与太郎さんで、上方では喜ぃさんと呼ばれ、同一キャラクターです。
■黒砂糖(くろざとう);サトウキビの絞り汁を煮詰めて作る黒褐色の砂糖で甘味料として用いる。黒糖は沖縄県と鹿児島県の離島で主に生産される含みつ糖のうち、サトウキビの搾り汁だけを煮沸濃縮以外の加工をせず製品化したものをいう。さらに、「沖縄黒糖」は2006年(平成18年)4月に特許庁の地域団体商標の登録を受けた文字商標で、同年6月には財団法人食品産業センターの「本場の本物」認証制度に認定され独自のマークを印刷され販売されている。一般に黒糖(こくとう)のほかマスコヴァド(英: muscovado)や、産地の奄美大島から称される大島糖(おおしまとう)なども含め黒糖と呼ばれることもある。
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