落語「百人坊主」の舞台を行く 桂米朝の噺、「百人坊主」(ひゃくにんぼうず)より。「大山詣り」の上方版
■この噺は、江戸版「大山詣り」として演じられている。原話は、狂言の演目の一つである「六人僧」。
東京に住んでいるから言うのでは無いのですが、この噺には矛盾点が多すぎます。まず、酒を飲まれたぐらいで源公を坊主にする動機が薄すぎます。また道中で先達のお庄屋さんはこの件がやりすぎだと分かっているのに、最後に怪我無くおめでたいと言うだけです。
■伊勢参り(いせまいり);伊勢神宮に参拝すること。近世には、春に行うことが多かった。
■先達(せんだつ);道者とも良い、神社・仏閣、霊場などを連れ立って参詣する人。巡礼。道衆。
■五貫文(ごかんもん);金貨幣と銭貨幣は別々の貨幣単位を持っていて、両者の交換率は時代によって変化しました。江戸時代初期には幕府公定相場で1両=4貫文と決められましたが、インフレが進み中期から後期に掛けては、1両=5貫文になってしまい、幕末には一気に上昇して10貫文まで上昇しました。いつの時代も1貫文=1000文です。
■阿房払い(あほうばらい);江戸時代の刑罰のひとつ。武士では両刀をとりあげて追放する。また、裸にして追放する。不祥事などにおいて、誇りを踏みにじったり名誉を貶めることで罰となす刑罰です。噺の中では無宿人になってしまうと言っています。
■無宿者(むしゅくもの);人別帳から名前を除かれること。また、その人。貧農や下層町人、犯罪人から無宿となるものが多く、江戸中期以降、大都市およびその周辺で多数出現した。帳外(ちょうはず)れ。江戸伝馬町の牢屋敷の一部で、無宿者の罪人を入れた牢屋があった。
■揃い(そろい);旅するにはグループで出掛ける事が多かった。その時は同じ色のリボンをするとか帽子を被るとか現代でもする様に、当時も着物や、日傘、手拭いなどを合わせて旅をしました。近隣の村と競争して目立つ揃いものを準備した。
■手甲(てっこう);手の甲を覆うもの。武具は多く革製、旅行・労働用には多く紺の木綿が用いられた。てこう。
■脚絆(きゃはん);旅や作業をするとき、足を保護し、動きやすくするために臑(すね)にまとう布。ひもで結ぶ大津脚絆、こはぜでとめる江戸脚絆などがある。脛巾(はばき)。戦時中、兵隊が巻いたゲートルもこの一種。
■檀那寺(だんなでら);自家の帰依している寺。檀家の所属する寺。檀寺。だんなじ。
■おっすぁん;『大阪ことば事典』には「和尚さん」の約訛とあるが「お住持さん」ではないか、とも言われる。どちらにしてもお寺の住職。
■餞別(せんべつ);遠くへ旅立つ人や転任・移転する人などに、別れのしるしとして贈る金品。また、それを贈ること。はなむけ。餞別を貰ったらお土産は買ってこなければなりません。
■暗峠(くらがりとぉげ);奈良県生駒市西畑町と大阪府東大阪市東豊浦町との境にある峠。古くは闇峠とも書かれた。現在は国道308号及び大阪府道・奈良県道702号大阪枚岡奈良線(重複)が通る。 標高は455m。
■古市(伊勢。ふるいち);伊勢神宮外宮と内宮をつなぐ参宮道沿いにあった遊郭・歓楽街、古市町。「精進落とし」と称してお伊勢参りの流行とともに栄えた。最盛期には遊郭など約70軒、遊女約1000人、浄瑠璃小屋4軒。備前屋・杉本屋・油屋などの遊郭が有名。お土産にかさばらず、荷物にもならなかったので、『伊勢音頭』がここから全国に広がった。
「いせおんど 桜襖」 伊勢古市の備前屋名物「伊勢音頭」の総踊り。1847–52年ごろ、歌川貞秀画。
■三十石に乗りまして淀川を上へあがって、伏見に;落語「三十石」に詳しい。京都・伏見、大坂・枚方間を淀川を使って三十石船で上り下りした船旅。
■近江八景(おうみはっけい);琵琶湖の南部にある八勝景。中国の瀟湘(シヨウシヨウ)八景に擬して定めた。
「近江八景」左から石山の秋月、唐崎の夜雨、矢橋(ヤバセ)の帰帆。広重画(八景の内三景)
■竹生島(ちくぶじま);西国三十三所札所めぐり第三十番札所「宝厳寺」のある島として、古来より人々の厚い信仰を集めてきた、西岸・今津港、東岸・長浜港からほぼ等距離に浮かぶ琵琶湖北端の周囲2kmの小島。
近江百景からは湖上30km以上は有ります。
■百万遍(ひゃくまんべん);弥陀の名号を100万回唱えること。極楽往生を祈願して、七日間に100万回念仏を唱えること。浄土宗で衆僧または信徒が集まり、弥陀の名号を唱えながら1080顆(か)の大数珠を100回繰り回す仏事。知恩寺の行事として名高いが在家でも行われる。
■伊勢暦(いせごよみ);全国に流通したカレンダーのはじまり。御師が配った暦は、生活に密着した情報が記されていたため農家を中心とした庶民に大好評で、神宮への信仰と信頼はさらに高まりました。
■熨斗あわび(のしあわび);贈答品の印に使われる「のし」は、伊勢神宮の供え物の熨斗あわびが起源。上流階級の武家間でも慶事の贈答品に用いられましたが、次第に形式化され、現在の印になりました。
■フカ;大形のサメ類の俗称。特に関西地方以西でいうことが多く、山陰地方ではワニ・ワニザメともいう。また、フカの源太のあだ名で、よく眠る人、特にいびきをかいて眠る人のたとえ。
■髪長(かみなが);僧をいう。斎宮(さいぐう)特に皇大神を祭る、伊勢神宮で使う忌み詞。僧侶は剃髪しているのでその反語を用いたもの。尼を女髪長という。
2016年9月記 前の落語の舞台へ 落語のホームページへ戻る 次の落語の舞台へ |