落語「将棋の殿様」の舞台を行く 五代目柳家小さんの噺、「将棋の殿様」(しょうぎのとのさま)より
■講談が元になったいわゆる「釈ネタ」で、大久保彦左衛門の逸話がもとになったといわれる。初代三笑亭可楽が時の将軍・徳川家斉の御前で演じた、という伝説が残る。小さんは道場も持った剣術の達人ですから、鉄扇で叩かれたら痛いでは済まされません。
■将棋(しょうぎ);チェスやシャンチーなどと区別するため日本将棋(にほんしょうぎ)ともいい、特に日本の「本将棋」には「持ち駒」の観念があることが特徴とされ、これは諸外国の将棋類似のゲームにも例のない独特のルールである(持ち駒を利用したチェス派生のゲームも考案されている)。『レジャー白書』によると将棋人口は推定670万人である。
国際将棋フォーラムや世界コンピュータ将棋選手権の開催などもあり、日本国外への普及も進みつつある。
■将棋に由来する慣用表現
詰んでいる(つんでいる);いかなる手を指そうとも王手の連続で詰みになってしまうことを表す用語から転じて、事実上勝敗は決している状態、また進退窮まる状態を指す。特に、まだ抵抗の余地はあるが何をしても結局は負ける、または苦境を脱することができないという場合に用いられる。
将棋倒し(しょうぎだおし);大勢の人ごみがあるきっかけで連鎖的に倒れること(類義語:ドミノ倒し)。駒を立てて並べ連鎖的に倒す遊びに由来する。古くから使用されてきた表現であるが、2001年に発生した明石花火大会歩道橋事故の際には、将棋のイメージが悪くなるとして日本将棋連盟が報道関係各社にこの言葉を使用しないように依頼し、これを受けて実際に使用の自主規制が行われたため、言葉狩りと批判を受けた。
捨て駒(すてごま);大局的な利益のために駒損を覚悟で相手に取らせる駒のこと。転じて、全体の利益を考えてあえて犠牲として見捨てる味方のこと。類語=トカゲの尻尾切り。
高飛車(たかびしゃ);飛車を定位置から二間または三間前に出して中央を制圧する戦法のこと。かつて横歩取り8五飛戦法が出現して間もないころは横歩取り高飛車戦法と呼ばれることもあった。近年、将棋の戦法に関しては「浮き飛車」という呼称が多くなり、戦法としての高飛車という呼称はほとんど用いられない。また、飛車の様子から転じて、高圧的な性格のさまを「高飛車な態度」のように使われる。
成金(なりきん);歩兵が成って「と金」となることから転じて、急に金持ちになった庶民のことを指す。多くの場合相手をねたんだりさげすむなどの意味で用いられる。似た言葉として、身分の低い者が高い地位に登りつめるという意味の成り上がりがある。
飛車角落ち(ひしゃかくおち);「二枚落ち」の別の表現で、一方の対局者が飛車と角を取り除いて対局することから転じて、チームスポーツにおける主力選手が二人欠けるなど、中心となる戦力を欠いた状態で勝負すること。
持ち駒(もちごま)、手駒(てごま)、駒(こま);対戦相手から奪って我が物とした駒の意で、随時任意の場所に打てることから、自分が利用できる人材や権利、選択肢のことを指す。「手駒」、また単に「駒」とも言う。「駒が足りない」のような使い方をする。
■将棋の反則行為;次に挙げる行為は反則と決められており、着手した場合直ちに負けとなる。対局中であれば、反則行為が行われた時点ではそれに気付かずに手が進められても、後になって反則に気付き指摘された時点で勝敗が決定する。ただし、対局相手が反則に気づかないまま投了・終局した際は投了が優先される。また、対局中の助言は一切禁止されるが、反則行為が行われた場合に限り第三者がそれを指摘しても良い。
反則によって決着した場合は、その時点で反則者が投了したものとする。
■鉄扇(てっせん);骨が鉄製の扇。武士が用いた。暗器・護身用として用いられ、現在でも創作作品の武器として人気を博している。
■月代(さかやき);男の額髪を頭の中央にかけて半月形に剃り落したもの。もと冠の下にあたる部分を剃った。応仁の乱後は武士が気の逆上を防ぐために剃ったといい、江戸時代には庶民の間にも行われ、成人のしるしとなった。
左、市川團十郎の助六図 国貞画。 右、相撲取り、谷風・江戸ヶ崎・柏戸 勝川春好画。東京国立博物館蔵
平時は側頭部および後頭部の髪をまとめて髷を結った。なお、現代日本において時代劇等で一般男性の髷としてなじみとなっているのは銀杏髷であり、髷が小さい丁髷ではない。さかやきをそり、髷を解いた髪型を「童髪(わらわがみ)」といい、「大童(おおわらわ)」の語源となっている。また、兜を被った際に頭が蒸れるのを抑える目的は「弁髪」に共通している。
「サカヤキ」の語源、また「月代」の用字の起源は諸説ある。一説にさかやきはサカイキの転訛であるという。戦場で兜をかぶると気が逆さに上るから、そのイキを抜くためであるという伊勢貞丈の説が広く認められている。
■大久保彦左衛門(おおくぼ ひこざえもん);大久保 忠教(おおくぼ ただたか)は、戦国時代から江戸時代前期の武将。江戸幕府旗本。徳川氏家臣・大久保忠員の八男。通称の彦左衛門で有名。
■雪隠詰め(せっちんづめ);将棋で王将を、盤の隅に追いこんで詰めること。転じて、逃げ道のない所へ追い詰めること。
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