落語「好きと恐い」の舞台を行く 九代目桂文治の噺、「好きと恐い」(すきとこわい)より
この噺「好きと恐い」は、上方版「饅頭恐い」の前半部分に当たります。上方版「饅頭恐い」の最後に一人シラ~ッとした男が、私の一番恐いのは「饅頭」であると発言します。その饅頭に関した部分をカットしたのがこの噺です。上方版「饅頭恐い」は日頃から人望もなく皆から浮き上がっている、その男に仕返しのためにみんなが考えたことは・・・。次の噺、上方版「饅頭恐い」をご覧下さい。
■九代目桂 文治(かつら ぶんじ);(1892年9月7日 - 1978年3月8日)。本名は高安留吉。生前は落語協会所属。定紋は結三柏。出囃子は『野崎』。通称「留さん文治」(※襲名までは単に「留さん」)。
周囲の薦めにより前名翁家さん馬から九代目桂文治襲名時、本人は「さん馬」「産婆」のクスグリが使えなくなることと、襲名に多額の資金が必要なことから嫌がったという。彼は落語界屈指の吝嗇家として有名だった。またロセンが大きいことでも知られた。
稲荷町(現:台東区東上野)の長屋に住み、三代目柳家小さん門下だった八代目林家正蔵(後の林家彦六)とは兄弟分であり家も隣り同士と昵懇の間柄であった。なお彦六は一時、文治の最初の師匠四代目橘家圓蔵一門に在籍していたことがある。
ドケチの逸話 落語界屈指の吝嗇(りんしょく=ケチ)家であり、師匠小さんの弟子七代目立川談志(自身もケチで有名であった)、彦六の弟子林家木久扇(芸人では珍しい節約家)をして賞賛せしめるほどの「ケチの文治」として有名で、数々の「ドケチ」の逸話を残す。
■都電(とでん);東京都経営の路面電車。東京都電車(とうきょうとでんしゃ)は、東京都地方公営企業の設置等に関する条例及び東京都電車条例に基き東京都交通局が運営している路面電車。通称都電(とでん)。2016年4月現在、荒川区の三ノ輪橋停留場と新宿区の早稲田停留場を結ぶ荒川線12.2kmの1路線のみが運行されている。
前身は1882年に開業した東京馬車鉄道で、1903年から1904年にかけて同社が路線を電化して誕生した東京電車鉄道、新規開業の東京市街鉄道、東京電気鉄道の3社によって相次いで路面電車が建設された。その後3社は1909年に合併して東京鉄道となり、さらに1911年に当時の東京市が同社を買収して東京市電、1943年の東京都制施行によって都電となった。
最盛期(1955年頃)には営業キロ約213km、40の運転系統を擁し一日約175万人が利用する日本最大の路面電車であったが、モータリゼーションの進展や営団地下鉄、都営地下鉄の発達によって採算性が悪化していった。1967年に東京都交通局が財政再建団体に指定されると再建策の一環として1972年までに廃止されることになったが、1974年に荒川線の恒久的な存続が決定し今日に至っている。
■雷門から銀座行き(かみなりもんから ぎんざゆき);都電蔵前線(22・31系統)始発駅・雷門(浅草寺正面)
- 駒形二丁目(駒形橋) - 厩橋(うまやばし) - 蔵前(蔵前橋西) - 浅草橋駅前(現・JR浅草橋駅前) - 浅草橋(京葉道路交差点)が延伸され、その後22系統は、
■浅草橋(あさくさばし);東京都台東区浅草橋一丁目にある、東日本旅客鉄道(JR東日本)総武線、東京都交通局(都営地下鉄)の両駅。台東区の駅で最も南に位置する。
JR東日本の総武本線支線(運転系統は中央・総武線各駅停車)と、都営地下鉄の浅草線が乗り入れ、接続駅となっている。
■新宿の先、代々幡(よよはた);現在、汎称地名としての「幡ヶ谷」(幡ヶ谷地域)。これは旧幡ヶ谷村の全域に相当し、現行行政地名では幡ヶ谷に加えて、いずれも渋谷区の本町、笹塚が含まれる。
似た話に次のような噺が有ります。
■ニカワで着く;獣・魚類の骨・皮・腱・腸などを水で煮た液を乾かし固めた物質。ゼラチンを主成分とし、透明または半透明で弾性に富み、主として物を接着するのに用いる。
■越谷(こしがや);埼玉県南東部の市。もと奥州街道の宿駅で市場町。鴨の猟場がある。東京の衛星都市。人口34万人(2017年5月現在)。江戸時代には、日光奥羽街道の宿場、越ヶ谷宿として栄えた。東武伊勢崎線(東京スカイツリー線)が南北に通り、日光奥羽街道で言う、千住、草加、越谷と江戸から3番目の宿場であった。
■狸の八畳敷き(たぬきのはちじょうじき);狸を語るときに必ず出て来るフレーズで、子供の頃には「たんたん狸の金玉は風に吹かれてぶうらぶら」などと唄ったものだが、その真偽についてはいまだ解りません。ま、誰も解らないことなのでしょう。また、犬みたいな動物が化けるなんて・・・、もっと解りません。
■夜便所に行けない;戦前まで、江戸でも地方でも、便所は屋外に建てられていました。今のように室内にあって、照明も明るく、水洗式の便座に座っていると、なんで恐いのかと我が子供も聞いたことが有ります。
■高橋(たかばし);東京都江東区の北西部に位置し、深川地域内にあたる。小名木川の北岸にあたり、北から東にかけて森下、南では小名木川を跨いで白河と接する。町名は小名木川に架かる橋梁・高橋に由来する。この橋梁は小名木川に架けられており、東京都道463号上野月島線が通る。橋長は43.8m。
■車蒸気(くるまじょうき);外輪蒸気船。江戸から隅田川を渡り、高橋、小名木川から中川を通って、船堀から新川で三角(さんかく)、江戸川に出て行徳に出るんだ、と噺の中でも語られていますが、和船で塩、魚、雑貨などを運んでいましたが明治に入って、鉄道が完全に引かれる前は蒸気船が運航して荷物も客も運んでいました。
左、小名木川を行く外輪蒸気船。 右、昭和22年の三角。左右に伸びる川が新川。右方向に江戸川が流れる。
■行徳(ぎょうとく);千葉県市川市の南部、江戸川放水路以南の地域名である。昭和中期までは市川市南部に加えて浦安市の元町地区(当代島・北栄・猫実・堀江・富士見)と船橋市沿岸部及び東京都江戸川区東篠崎を指す本行徳を中心とした広域地名でもあった。現在では、一般的に旧東葛飾郡行徳町の江戸川放水路以南、旧南行徳町の全域を指して使われる。江戸時代には行徳塩田が設置され、水上交通の要所でもあった。
江戸川の河岸に有った行徳の新河岸風景 市川歴史博物館蔵。明治時代の蒸気船もここに停泊しました。
■今井橋(いまいばし);東京都江戸川区と千葉県市川市を結ぶ旧江戸川に架かる東京都道・千葉県道50号東京市川線の橋である。
■江戸川(えどがわ);関東地方を流れる一級河川。利根川水系の分流(派川)です。流路延長59.5km(旧江戸川河口より)、流域面積約200km2。流域は、茨城県、千葉県、埼玉県、東京都の1都3県におよぶ。
■一町半(1ちょうはん);長さの単位。1町=109m。1.5町=約160m。
2017年12月記 前の落語の舞台へ 落語のホームページへ戻る 次の落語の舞台へ |