落語「近江八景」の舞台を行く 三代目三遊亭円歌の噺、「近江八景」(おうみはっけい)より
■原話は、1781年(安永10年)に出版された笑話本『民話新繁』の一編「鞜の懸」。上方落語の演目として成立し、東京へは四代目春風亭柳枝が持ち込んだという。
■算木(さんぎ);または算筹(さんちゅう)。中国数学や和算で用いられた計算用具。縦または横に置くことで数を表した。算木に基づく算木数字も使われた。算木を用いた計算法を籌算(ちゅうさん)という。
■筮竹(ぜいちく);易占において使われる50本の竹ひごのようなもの。長さは35cmから55cm程度のものが多く、両手で天策と地策に分けるときに扇形に開きやすいよう、手元に当たる部分をやや細く削ったものもある。算木とともに、易者のシンボルとして知られている。竹でないものもすべて含めて筮(めどき)と呼ぶ。
『繋辞伝』に「蓍之徳圓而神卦之徳方以知」とあることから、古くは蓍(シ=めどぎ。キク科の多年草であるノコギリソウを指す)の茎を用いていたことが分かる。しかし、『繋辞伝』は蓍という植物の神秘を説くものではない。周易の基本は数にあるので筮の材質は何でも良い。蓍の精油は西洋において媚薬として知られていたものであるが、無論、易の神秘の西洋魔術を混同すべきではない。ほかにメドハギも使われたという。
筮の数は大衍の数、即ち50であるが、占いに用いるときは一を太極に象(かたど)り、49を用いる。大衍の数の由来には定説がないが、天数25と地数30の和より天地に共通する五行を除くという鄭玄の説が尤もらしい。
■近江八景(おうみはっけい);日本の近江国(現・滋賀県)にみられる優れた風景から「八景」の様式に則って8つを選んだ風景評価(作品の場合は題目)の一つ。
石山秋月 (いしやま の しゅうげつ) = 石山寺(大津市)。
○ 江戸後期の浮世絵師・歌川広重によって描かれた錦絵による名所絵(浮世絵風景画)揃物『近江八景』は、彼の代表作の一つであり、かつ、近江八景の代表作である。名所絵揃物の大作である『保永堂版
東海道五十三次』が成功を収めた後を受けて、天保5年(1834)頃、版元・保永堂によって刊行された。全8図。
石山秋月= 石山寺(大津市)。 勢多(瀬田)夕照= 瀬田の唐橋(大津市)。
三井晩鐘 = 三井寺(園城寺)(大津市)。 唐崎夜雨= 唐崎神社(大津市)。
堅田落雁= 浮御堂(大津市)。 比良暮雪(下絵)= 比良山系
・ 浮御堂(うきごどう);近江八景「堅田の落雁」で名高い浮御堂は、寺名を海門山満月寺という。平安時代、恵心僧都が湖上安全と衆生済度を祈願して建立したという。先代の堂は昭和9年(1934)に室戸台風によって倒壊、現在の堂は昭和12年(1937)に再建されたもので、室戸台風の直後に竜巻も近くで発生している。昭和57年にも修理が行われ、昔の情緒をそのまま残している。境内の観音堂には、重要文化財である聖観音座像が安置されている。広重の「堅田の落雁」のバックにも描かれた御堂。
「のせた(瀬田)から さき(唐崎)はあわず(粟津:あはづ)か たた(堅田)のかご
ひら(比良)いしやま(石山)や はせ(矢橋)らしてみゐ(三井)」
この歌は、大田南畝が京へ上ろうと瀬田の唐橋に来た時、「近江八景の題目8つの全てを31文字の歌の中に入れて詠んだら駕籠代をただにしてやる」と駕籠屋に問われ、歌ってみせたものとされている。この逸話は講談によって広まり、ここでは無いが、落語『近江八景』の枕となる小噺の中でも紹介される場合もある。
○ 松尾芭蕉が紀行文「奥の細道」の作成のため、敦賀に立ち寄った際詠んだ句、
■女郎買い(じょろうがい);女郎を揚げて遊ぶこと。
これほど遊里が多かったことについて、江戸は女にくらべて男の数が多く、配偶者にめぐまれない男が多数いたからという説がある。たしかに江戸時代の初期には都市建設にともなう職を求めてどっと労働者が流人し、男の数か極端に多い時期もあったが、中期以降は男女の数にさほど不均衡はない。男が多かったからという説はあたらない。
■年期(ねん);”ねんき”(年期、年季)と書いて”ねん”と発音します。江戸時代、女郎屋では10年を期間と定めてあった。
『十年で極楽へ出る篭の鳥』 柳多留
『泥水を洗って白い足袋をはき』 柳多留
■真夫(まぶ);間夫とも。女郎の一番愛しい人。
■吉原(よしわら);まずは、江戸が出来たのは家康が慶長8年(1603)に江戸に幕府を開きました。人家もまばらな寒村でしたから、各地から商人、労働者、武家が江戸に入ってきて繁栄を極めるのですが、男連中が主ですから、自然春を売る女達も集まってきました。当然、江戸の各所に無差別に傾城(けいせい)町が出来上がっていきました。
■台の物(だいのもの);吉原で仕出し屋から来る台に飾られた料理。
■はばかり;便所。トイレ。
■二の酉(にのとり);吉原の裏にある鷲(おおとり)神社の祭礼で、11月の酉の日に開かれ通常2回だが、3回の年もあり、この年は火事が多いと言われる。熊手(かっこみ)に縁起物を飾り商売繁盛を祈願して、買って帰り店に飾られます。深夜まで熊手を求めて参拝者が訪れますが、裏の吉原に寄り道していく善男が大勢いて、この日は大変混雑します。
■裏を返す(うらをかえす);遊廓では初めて登楼することを、初会と言います。二度目に上がることを裏を返すと言い、三度目から馴染みとなります。現在でも、飲み屋さんに行って「ここは、馴染みの店なんだ」、と言うときは、最低でも3回以上通ってないと、この言葉は使ってはいけません。
■沢火革(たくかかく);改革、改新の時。大きな変化を表すことから、守りきれない運気にあるとされています。例えば夫婦仲や恋人との関係であれば、改善しようと努力しても、まったくラチがあかず、むしろ状況が悪化することも考えられるでしょう。倦怠期を解消すべく、刺激を与えても無駄な努力に。しかし、思いきって離れてみると、問題がきれいさっぱり解消されることもあります。また、正しい方向に向かおうとしている変化であれば、周囲は賛成し、力を貸してもくれるとも言えるでしょう。
■四爻(しこう);六十四卦を構成するうち、下から4番目の爻。「悔いはなくなり、誠意をもって改める。吉」。改革に取り組む時が訪れました。誠意をもって実行に移せば成功します。
■変爻(へんこう);変爻と変卦とは、占ってでた卦が表、変卦が裏にあたります。表面にあらわれたことだけでなく、裏に秘められたこともみるためです。略筮法で三度目に別に筮竹を数えて得た爻が変爻になります。
■水火既済(すいかきせい);「既済」は完成、すでに済(ととのう。)の意味。「水火既済の時、小事は通じる。貞正であれば良い。最初は吉でも終わりは乱れる」。
水
火既済の時は功成り名遂げた時で、とりあえず今はいい時といえましょう。しかし、完成は乱れの始まりであり、完成した状態をどうすれば維持できるのかを心
すべきです。すなわち、新規に始めることは避け、今以上のものを求めないことが大切です。人間にとって実に難しいことなのですが、そう心がけるべきです。
あなたがサラリーマンであるならば、これ以上の出世を望まず、また、独立などの冒険は避けるべき時です。完成をみたとたん、面白味が失せ、だらけてくるものですが、「治に居て乱を忘れぬ」よう、気持ちを引き締め備えることです。
沢火革、四爻、変爻、水火既済、どれも易の言葉、事象です。私は全くの素人で、この件についての意味は広辞苑にも載っていませんし、インターネットから引いていますが、腑に落ちていません。読めば読むほど分からなくなります。皆さんも「易にはこんな言葉があるんだな~」、位の理解で十分だと思います。その道に進むのではないでしょうから・・・。
■腹掛け股引(はらがけ ももひき);職人が仕事につくときの定番衣料品です。作業服を質に入れたら、どうやって仕事に出るのでしょう。着替えの片方を質入れしたにしても、女郎と遊ぶ金が有ったら、質屋から出しなさいよ。
■見料(けんりょう);人相・手相などを見てもらう時に支払う料金。
■膳所(ぜぜ);膳所(ぜぜ)は滋賀県大津市にある地名。旧・膳所町。難読地名として知られる。
2018年1月記 前の落語の舞台へ 落語のホームページへ戻る 次の落語の舞台へ |