落語「さんま芝居」の舞台を行く 三遊亭金時の噺、「さんま芝居」(さんましばい)より
■三遊亭金時(さんゆうてい きんとき);昭和37年(1962)11月東京都新宿区生まれ。平成30年現在55歳。今徹底的に稽古をすれば父親のように名人の声が掛かるでしょう。
■蔦紅葉宇都谷峠(つたもみじ うつのやとうげ);「蔦紅葉宇都谷峠」は金原亭馬生の人情噺を原案として二代目河竹新七(黙阿弥)が書いた世話物で、黙阿弥はこれを四代目市川小團次に当て書きしています。
歌舞伎「蔦紅葉宇都谷峠」について、『あらすじ』
落語「毛氈芝居」には芝居「蔦紅葉宇都谷峠」の事が詳しく書かれています。
■宇津ノ谷峠(うつのやとうげ);宇都谷峠は芝居で使われる架空の峠ですが、宇津ノ谷峠をイメージした峠です。静岡県静岡市駿河区宇津ノ谷と藤枝市岡部町岡部坂下の境にある峠。国道1号・旧東海道が通る。標高151m。
中世から交通の要衝として和歌にも詠われ、現在でも国道1号のトンネルが通過している。また、平安時代の道(蔦の細道)から国道1号現道のトンネルまで、全て通行可能な状態で保存されており、道の変遷を知ることができる。近世東海道の交通を知る貴重なものとして平成22年(2010)2月22日に国の史跡「東海道宇津ノ谷峠越」に指定された。
■秋刀魚に大根おろし(さんまにだいこんおろし);秋刀魚、今更解説することも無く、ご存じ秋の味覚がいっぱい詰まった魚で、落語「目黒の秋刀魚」でも殿様を虜にしてしまった美味な魚です。安価で栄養価が高く、旨い、こんなにも三拍子そろった魚は他には見つけることが出来ません。(貴方考えていますね、イワシやアジなども旨いし江戸湾の鯨なども安価で旨かった)。庶民の落語の中には、この秋刀魚が出て来ます。先程の「目黒の秋刀魚」、「秋刀魚火事」、この噺「秋刀魚芝居」等が主役の顔をして出て来ます。長屋では秋刀魚を焼くのが当たり前でしたが、季節を感じさせてしまうので「イワシ」を登場させています。
■赤身で一杯(あかみでいっぱい);赤身とはマグロの赤身です。江戸時代秋刀魚と並んでゲスな魚の代表でした。ゲスというのは大漁に捕れて安価な魚を言い、決して不味いとか食べにくいとか言うのとは違います。マグロは、江戸時代に大漁に捕れたときがあり、保存が利かないので、赤身のところだけ醤油に浸けてズケと呼ばれ、にぎり寿司の代表にもなりました。マグロの脂身は、俗に言う大トロや中トロは今のように保存設備がなく捨てられていました。その捨てられる部分を使って、「ネギマ」(葱鮪)が場末の食べ物屋で出されていました。これは、トロのブツ切りを鍋で煮て、そこにブツ切りの長ネギを入れただけの汁です。これがバカウマで病みつきになるのですが、現在はトロが高価で寿司屋でも目の飛び出る程の部位を汁にするのですから、それは贅沢で手が出ません。
■鎮守様(ちんじゅさま);その地を鎮め守る神。また、その社。村の守神。鎮守の杜(ちんじゅのもり)、鎮守の社の境内にある森。
■市川團十郎(いちかわだんじゅうろう);屋号は成田屋。定紋は三升(みます)、替紋は杏葉牡丹(ぎょよう ぼたん)。役者文様は鎌輪ぬ(かまわぬ)。
■幕間(まくま。まくあい);劇場で一幕終って、次の幕が開くまでの間。幕を引いてある間。芝居の休憩時間。
■柝(き);拍子木。舞台に敷かれた板に、拍子木で打ち下ろし、その音響とリズムで舞台効果を上げる技法。
■定式幕(じょうしきまく);歌舞伎の舞台の正式の引幕。萌黄(モエギ)・柿・黒の3色の布を縦にはぎ合せたもの。配色は各座によって異なる。狂言幕。
江戸市村座の定式幕(黒-萌葱-柿色)。
現在は国立劇場や大阪新歌舞伎座が使用している。中村座の白を萌葱に。
■100両(100りょう);現在の貨幣価値に直すと、一両=8万円として、800~1000万円位で生やさしい金ではありません。
■官位を貰うお金(かんいをもらうおかね);盲人の位は大きく四つに別れていて、金銭でその位を買うことが出来た。彼らは検校、別当、勾当(こうとう)、座頭の四つの位階に、細かくは73の段階に分けられていたという。
■道中差し(どうちゅうざし);近世の庶民が護身用として旅行中に携帯した脇差。武士の刀よりやや短いが、刀は刀であった。
■大根役者(だいこんやくしゃ);金時はがさがさな大根と言っていますが、通常は煮ても焼いてもオロシにしても、主役になる事がありません。大根で食中りはしません。で、どんな事をしても当たらない役者のことを大根役者と言います。また、真っ白な大根はしろ→素人と言われ、どんなに頑張っても黒→玄人にはならないとも言います。
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