落語「酢豆腐」の舞台を行く 八代目桂文楽の噺、「酢豆腐」(すどうふ)
軽口
ことば
■覚弥の香香(かくやのこうこう);古漬けを塩出しして、細かく刻んだで、醤油を掛けた物。徳川家康の料理人・岩下覚弥が始めたと言われる。また、高野山の隔夜堂の歯の弱い老僧のために作られたからともいう。
■くろもじ(黒文字);クスノキ科の落葉低木。高さ2m余。樹皮は緑色で黒斑があり、それを文字に見たてたのが名の由来という。雌雄異株。春、葉に先だって淡黄色の花を多数、散形につける。果実は小球形で、黒熟。材は香気をもち小楊枝や箸を製する。この木から作るので、「つまようじ」の別称。
■小間物屋(こまものや);芝の「若狭屋」と「かねやす」が、江戸では指折りの高級小間物店であった。
■初会ぼでベタぼ(しょかぼでべたぼ);遊びに行って、初めての見世で、初会惚れ(女郎が初めての客なのに惚れられること)で、べた惚れされたこと。
■岡惚れ(おかぼれ);人の恋人やつきあいもない者にわきからひそかに恋すること。おかっぽれ。
■立て引きが強い(たてひきがつよい);義理や意地を通すこと。
■2貫(2かん);通貨の単位。1両=4分=4貫文=4000文。その半分で2貫文は2分で2000文。約4万円。ものすごく高い香々代です。
■御通家(ごつうか);通人、粋人。
■拙(せつ);私。自分のことをへりくだっていう語。近世、幇間などが好んで用いたキザ語。
■食べてみたら;実際に腐った豆腐を食べた事のある噺家に(なる前の話だが)瀧川鯉昇がいる。三日間、40度の熱でうなされ、タオルのような軽いものまでも持ち上げられないほどに衰弱した鯉昇は、その後約2ヶ月の間、温泉で療養することになってしまった。
■誤った辞書;かつて日本の多くの国語辞典には、「酢豆腐」は「生豆腐に酢をかけた食品」というまったく誤った語釈を与えていた。これは、他の辞書編纂者が無検証のまま転載したためで、『広辞苑』の初版(1955年刊行)あたりで指摘されるまでいくつかの辞書に同様の記述が見られた。本来の酢豆腐は落語ネタ酢豆腐の若旦那に由来し、半可通を意味する言葉であり酢豆腐という食べ物も実在しない。なお『広辞苑』では第二版(1969年)から正しい内容に修正されているが、現在でも『角川国語辞典 新版』(1969年)など、語釈が誤ったままの辞書もある。
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