落語「化け物娘」の舞台を行く 五代目古今亭志ん生の噺、「化け物娘」(ばけものむすめ)。別名「浅井の化け物娘」より
■この噺のマクラに本所七不思議が有ります。落語「本所七不思議」にその詳細があります。
可哀相な娘はもう一人います。落語「遠山政談」に出てくる娘で、下総の四街道の出で、”お染め”という十七になる娘です。この娘も三つの時、疱瘡を患い治ったが顔中ヒドイあばただらけになってしまった。その上、七歳の時、部屋で遊んでいると、切ってある囲炉裏に落ち、自在鉤に吊されていたヤカンの熱湯を頭からかぶってしまった。二目と見られない顔になってしまった。それに背が低くて横に大きく転がった方が早い体格であった上に、少々頭が弱かった。この娘が奉公に出たが・・・。
■本所の割り下水(ほんじょわりげすい);墨田区を東西に走っている割堀が2本。北側を北割り下水と言い、今の春日通りの本所二丁目から大横川、今は埋め立てられて、大横川親水河川公園までの割堀です。
上写真:下水工事が完了した「南割り下水」昭和4年 TOKYO下水道物語 東京都下水道局出版より
特別に南とか北と言わない時は南割り下水を言います。この噺でも南割り下水が舞台になります。割り下水は道路の中央を開削された割堀で、川(堀)ほど広くなくドブより広いもので、4尺(1.2m)から1間(6尺=1.8m)の川幅が有りました。両側は当然道路になって居ました。下水ですから、よどんで汚かったと言われています。
北斎は、宝暦10年(1760)9月23日に本所で生まれ、嘉永2年(1849)4月18日に90歳で没した。「冨嶽三十六景」などの作品で知られる浮世絵師・葛飾北斎は、江戸本所割下水
(現在の墨田区亀沢)に生まれました。 この北斎通りは本所七不思議の舞台の中心地です。 【北斎の画室】弟子の露木為一が描いた「北斎仮宅図」をもとに再現。北斎は娘の名を呼んだことがなく、いつも「おうい」と連呼したので彼女は「応以」という雅号を自らつけて以て快としたというのだから流石に大北斎の娘だけのことはあった。右の写真は、彼が83才の時に娘の栄と住んでいた時の画室を再現したもので、壁にかかる書「北斎仮宅図」には次のような添え書きが載っている。
■疱瘡(ほうそう);痘瘡(トウソウ)すなわち天然痘の俗称。または、種痘およびその痕のこと。いもがさ。もがさ。豌豆瘡(エンドウソウ)。
■囲炉裏(いろり);屋内に恒久的に設けられる炉の一種。伝統的な日本の家屋において床を四角く切って開け灰を敷き詰め、薪や炭火などを熾すために設けられた一角のこと。主に暖房・調理目的に用いる。
■半蔵松葉(はんぞうまつば);文化11年春(1814)『吉原細見』で見ると、吉原角町に有った、松葉屋半蔵です。同名の”松葉”と言う見世が有ると、主人の名前を取って、半蔵松葉と言います。吉原では大見世で通った見世です。
■煙草盆(たばこぼん);喫煙に必要な火入れ、灰落し、たばこ入れ、きせるなどをひとつにまとめたたばこ盆は、刻みたばこの喫煙に便利なようにと改良され、機能的に優れたものとなっていきました。
■阿部川町(あべかわちょう);浅草阿倍川町。台東区西浅草三・四丁目一部で、菊屋橋交差点の北側は合羽橋商店街と言って厨房機器なら何でも揃うという街です。その商店街を挟む道が新堀川があったところで、今は暗渠になって南に下っています。菊屋橋の南側に位置する街ですが、道の西側にあった街です。
落語「富久」に、旦那の店が火事だというので、ここから掛けだした幇間の久蔵さんであった。
■吉原(よしわら);今更言うのもなんですが、俗に仲。浅草の北、千束にあり、新吉原と呼ばれ、江戸町一・二丁目、角町、京町一・二丁目の五丁町から出来ていた。揚屋町、伏見町は入らない。古くは元和元年(1617)日本橋近くの葭原(葭町=よしちょう)に有った(元吉原)が、江戸の中心になってしまったので、明暦3年(1657)明暦の大火直前に、この地に移転させられた。『どの町よりか煌びやかで、陰気さは微塵もなく、明るく別天地であったと言われ<さんざめく>との形容が合っている』と、(先代)円楽は言っている。私の子供の頃、300年続いた歴史も、昭和33年3月31日(現実には2月末)に消滅した。江戸文化の一翼をにない、幾多の歴史を刻んだ、吉原だが、今はソープランド中心の性産業のメッカになってしまった。「仲」とも、品川の南に対して「北」とも言う。
■ひもじい時の不味い物なし;空腹の時は何でもおいしく食べられる。
■岩見重太郎(いわみ じゅうたろう);伝説的豪傑。筑前小早川家の臣で、諸国を周遊して勇名を挙げ、天橋立で父のかたき広瀬軍蔵らを討ち、豊臣秀吉に仕えて薄田隼人(ススキダハヤト)、または、薄田兼相となったという。
■本所七不思議のひとつ、浅井の化け物娘;志ん生はその様に言っていますが、最初に言ってように化け物娘は七不思議の中には入っていません。
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