落語「鍬潟」の舞台を行く 五代目桂文枝の噺、「鍬潟」(くわがた)より
■五代目 桂 文枝(かつら ぶんし);(1930年4月12日 - 2005年3月12日)は上方の落語家。本名は長谷川 多持(はせがわ たもつ)。
■原話;安永6年(1777)に大坂で刊行された笑話本、「新撰噺番組」巻五の「一升入る壺は一升」です。これは、子供並に小さな男が、何とか背を伸ばしたいと、日夜神に祈ると、ある晩、不思議な童子が夢枕に。童子は男に、「飯、餅、酒を一斗(18ℓ)ずつ飲食し、目覚めたあと背伸びをすれば、汝の背は布団から足が出るくらいにはなるぞよ」と、妙なご託宣。男は下戸だったのに、大きくなりたい一心。命がけで酒をのみ干し、馬のように食らって目覚めると、アーラ不思議、本当に足がニュッと布団の外へ。やれありがたいと狂喜して立ち上がると、背は元のまま。後ろを振り返ると、寝ていたのは座布団の上。オチの部分がそっくりですが、この小咄は、しょせん、人には生得の、定められた器しか与えられないという教訓でしょう。
■円生の逃げ噺;上方落語で、東京にいつ移植されたかは、不詳です。東京では、大正から昭和初期に五代目三遊亭円生(1940年没)が得意にしました。五代目は「デブの円生」とあだ名されたほど、相撲取りなみに恰幅がいい落語家でした。戦後は、養子の六代目円生が継承。客種が悪いときに演じる「逃げ噺」の一つにしていました。
■大坂相撲(おおさかずもう);江戸時代から大正の末まで存在した相撲の興行組織。
左、谷風(左)・雷電(右)。 右、谷風・小野川
■九紋龍清吉(くもんりゅう);細谷清吉(明和元年~文化5年)。大阪府交野市出身(生まれは愛媛県)。大阪相撲の時津風部屋に入門、その後、東西合併により1927年1月、序二段に付出される。1932年1月は幕下上位にあったが、春秋園事件による大量の脱退者の穴を埋めるために翌2月場所で東十両2枚目まで番付を上げた。この場所は4勝4敗の5分、翌場所は全休と幕下に落ちた。1933年1月と1934年1月に十両に復帰したが、いずれも負け越しに終わった。1935年5月に4度目の十両昇進で勝ち越したが翌場所は3勝8敗と負け越し、幕下に落ち、その場所(1936年5月)限りで廃業した。
■釈迦ヶ嶽(しゃかがたけ);釈迦ヶ嶽雲右衛門(寛延2年~安永4年)。出雲国能義郡(現在の島根県安来市)出身で朝日山部屋及び雷電部屋に所属していた江戸時代の大相撲の第36代大関。本名、天野久富。実弟の稲妻咲右エ門も大関で、大相撲史上初の兄弟幕内力士でもあった。
■二尺;1尺は約30.3cm、約60cm。小男を通り越した小男です。
■ボロクソ;朝飯前・へっちゃら・屁の河童・お茶の子サイサイ。また、クソミソの意にも用いる。ボロカス。(例:そないボロクソに言わんでもええやないか)。
■コマンジャコ;フナ・モロコの稚魚やメダカなどの小魚。細かい雑魚。それから転じて、小せがれの意に言う。(例:コマンジャコが何ぬかす)。
■雷電為右衛門(らいでん ためえもん);(1767~1825) 江戸後期の力士。信濃の人。当時の最高位である大関をつとめ無類の強豪ぶりをうたわれた。歴代幕内力士史上最高の成績。
上左、雷電為右衛門。 富岡八幡の横綱碑に刻まれた雷電。 下左、墓所、報土寺(港区赤坂七丁目)。 雷電のマワシ。
■鍬潟三吉(くわがた さんきち);鍬潟は、身長が二尺二寸(68cm)。相撲界には実在しない架空の関取。江戸時代には、小人力士や巨人力士、子供力士などを見世物的に巡業の看板にすることはあっても、実際に割りを組んで、相撲は取らせませんでした。
「大童山土俵入り」部分 写楽画
■エイの油;エイの肝臓から抽出した油脂。火傷の薬に使用したという。また木彫りなどを染色したあとの色止めに使用されたとも。荏胡麻油とも。荏胡麻は、シソ科の一年草。インド・中国原産の油料作物。高さ約1m。茎は四角。葉・茎は浅緑色、葉は一種の臭気がある。花は白色。果実は小さく、炒ってごまの代用、また荏油(エノアブラ)を採る。いくつかの品種がある。
■二字口(にじぐち);相撲で、東西の力士の土俵への上がり口。徳俵と平行に土俵外に俵が埋めてあり、二の字の形になっていることからいう。右写真。
■三十三天(さんじゅうさんてん);仏教世界観における天の一つ。利はサンスクリット語トラーヤストゥリンシャTryastriaの音訳語の略称。原語は「33」、すなわち「33種の天(または天神)からなる世界」を意味し、「三十三天」と意訳される。須弥山(しゅみせん)の頂上にあり、その東西南北にそれぞれ八つの城、中央に善見城(ぜんけんじょう)、合計33の城を有す。善見城中の殊勝殿(しゅしょうでん)には三十三天の首領である帝釈(たいしゃく)天が住む。この天は楼閣(ろうかく)、苑林(おんりん)、香樹(こうじゅ)に満ち、一種の楽園であり、欲界に属し、性の交わりの享受がある。釈迦(しゃか)の母は死後ここに生まれ、釈迦が彼女に説法するためにここを訪れたという。
■奈落(ならく);地獄。物事のどんぞこ。最後のどんづまり。奈落の底。劇場で、花道の下や舞台の床下の地下室。回り舞台やせり出しの装置がある。
■浅草の観音さん;お身丈は1寸8分(約5.45cm)でも18間(約32.7m)四面のお堂に入ってござる。
■福島(ふくしま);大阪市福島区。鍬潟の住まい。北に新淀川、南は堂島川・安治川に面し、大阪市の西北部に位置しています。
区内に九つの駅を有し、市内中心部への、また、神戸方面への交通の要衝となっています。
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