落語「卯の日詣り」の舞台を行く 桂米朝の噺、「卯の日詣り」(うのひまいり)より。類似江戸の噺「三人片輪」
■落語「卯の日詣り」;桂米朝も言っているように、今後の出し物として演じられることは無いであろう作品です。人権に対する世相の高まりがあって、私でも違和感を覚えます。しかし、落語にはこの様な噺も有るのだという、一つの典型です。歴史的には残した方が良いのかも知れませんが、聞く人が不愉快になる噺は、自然淘汰されていくでしょうね。
住吉大社の卯の日;
兎(卯)は住吉大社(大阪府住吉区)の御鎮座(創建)が神功皇后摂政11年(211)辛卯年の卯月の卯日であるご縁により境内のウサギ像は奉納されました。
■江戸の「三人片輪」;上方落語の内容とは全く異なり、乞食のおし・つんぼ・めくらのそれぞれ真似をした三人が夜出て来て、ふくべの酒を飲みながら、月と虫の音を楽しんでいたが、乞食のおしが「祝儀を出せ」とせがんだために喧嘩となる。と言う噺。
■せむしにかったい;せむし=【傴僂】。(昔、背に虫がいるためになる病気と思われていたからいう)
背骨が後方に湾曲して弓状をなす病気。また、その病気の人。脊柱後湾。背中が飛び出してコブが有るように見えた。
かったい=カタイの促音化。ハンセン病。また、その人。
■中船場(なかせんば);大阪市中央区の地名。大阪の商業中心地区にあたる。豊臣秀吉が石山本願寺跡に大坂城を築城時に、大勢の家臣団や武士がこの地に集まり、武器・武具から食料・生活用品などが大量に必要となったので、平野や堺、京都、伏見から商業者を強制的にこの周辺に移住させ、急速に城下町の整備を進めた。平野町、伏見町といった町名はその名残りである。その後、船場周辺には船宿、料亭、両替商、呉服店、金物屋などが次々に誕生し、政治、経済、流通の中心地となり栄え始めた。
江戸時代には「天下の台所」として北部を中心に日本の商業の中心となった。また、順慶町あたりから島之内、道頓堀にかけては歓楽街として栄えた。大坂の町人文化の中心となったところ。中船場は船場の中でも中心と成ったところ。
浪花名所図会 「船場の順慶町夜店の図」 歌川広重画 国立国会図書館所蔵
■回り髪結い(まわりかみゆい);各お宅を回る移動髪結い。自分の店を持たず、お得意さんのお宅に4~5日おきに伺って、ご主人から小僧までの髪を直して歩いた髪結い職人。
■太鼓持ち(たいこもち);幇間。男芸者。客の宴席で、座を取り持つなどして遊興を助ける男。落語「王子の幇間」に詳しい。「紺屋高尾」、「搗屋無間」、「松葉屋瀬川」、「鰻の幇間」等にも出てきます。
幇間の「幇」は助けるという意味で、「間」は人と人の間、すなわち人間関係をあらわす意味。この二つの言葉が合わさって、人間関係を助けるという意味の職業となります。宴会の席で接待する側とされる側の間、客同士や客と芸者の間、雰囲気が途切れた時楽しく盛り上げるために繋いでいく遊びのプロが、幇間すなわち太鼓持ちである、ともいわれる。
■洗濯糊(せんたくのり);糊は、米・正麩(シヨウフ)などの澱粉質から製した、粘り気のあるもの。広義には接着剤をいう。布地の形を整えこわばらしたり、物を貼りつけたりするのに用いる。のり屋の婆さんと言えば、長屋には老人の商売として、洗濯のりを自分で作り売って歩いた。ここでは大店なので、洗濯担当の女中がのりを作って洗濯を始めるところであった。
■住吉街道(すみよしかいどう);新興都市の大坂と既存都市の堺を結ぶ、住吉参詣を兼ねた道路「住吉街道」として整備された。紀州街道の堺以北の区間はこの住吉街道がほぼそのまま踏襲されている。
■腰掛け茶店(こしかけじゃや);路傍や公園などによしずを差し掛けて腰掛けを置き、通行人を相手に茶や菓子を供する茶屋。掛け茶屋。
歌川広重「木曽街道六十九次・関ヶ原」 右側の茶屋では旅人相手に茶の接待をしています。看板に”そばきり”、”うんどん”と入っていますので、味は別にして軽い食事ぐらい出来たのでしょう。
■一見茶屋(いちげんちゃや);上記のような掛け茶屋ではなく、もう少し上等なお茶屋さんです。料理、お酒の提供が出来て、場所によったら芸子も呼べる高級料理屋です。予約や茶屋を通さなくても、ふらりと入ることが出来る料理茶屋。
■住吉さんの反り橋(すみよしさんのそりはし);大阪市住吉区の住吉大社境内に架かる橋。通称で「太鼓橋」とも呼ばれ、この橋を渡ると本殿に行かれる。橋の長さは約20m、幅は約5.8mの木造桁橋。橋中央部の高さは4.4mで、中央部を頂点として半円状に反っている。最大傾斜は約48度となっている。地上と天上を結ぶ虹に例えられていたため、橋が大きく反っている構造になっている。
大阪名所絵はがきより、明治期の反橋(太鼓橋) 当時は神専用の橋で参拝者は渡れず、参拝者は手前の便宣橋(よるべばし:撤去年不明)を利用した。 下記、現在の反り橋。
■仲居(なかい);遊女屋・料理屋・宿屋などで、客に応接しその用を弁ずる女中。
■ミミズ腫れ(みみずばれ);皮膚の傷跡が、ミミズのように長く赤く脹れること。また、そのもの。
■板場(いたば);料理屋で俎(マナイタ)を置く所。料理場。また、菓子屋でのし板を置く所。転じて、そこで働く者。板前(いたまえ)。いたもと。いた。
■いかき;竹で編んだ籠(カゴ)。ざる。畿内及奥州にては、”いかき”、江戸にて、”ざる”と呼称します。
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