落語「こんにゃく問答」の舞台を行く 古今亭志ん朝の噺、「こんにゃく問答」(こんにゃくもんどう)
■上州安中(じょうしゅうあんなか);江戸時代、中山道の宿場町として栄えた上州安中市。現在の群馬県安中市。おおらかな風土である土地は、また、「文教のまち」としてもしられています。中山道の宿場は安中を中心に、江戸より高崎 - 板鼻 - 安中 - 松井田 - 坂本 - 軽井沢です。落語「安中草三」に詳しい。
■草津(くさつ);現在・群馬県吾妻郡草津町大字草津、温泉地で有名。八公はここに来るはずであったが、路銀がなくなり安中で居候。安中よりまだ北の、群馬県の北側に草津は有ります。冬はスキーが出来るほど雪が降ります。
■都々逸(どどいつ);『徒名(あだな)立て膝鬢(びん)掻き上げて忘れしゃんすな今のこと』、と色っぽいので人気があります。色気の無い都々逸なんて・・・。
■山門の碑;禅宗の門に掲げられている「葷酒(くんしゅ)山門に入らず」の『葷』とは、匂いが強く精のつくニンニク、ニラ、ラッキョウなど、特に肉と魚そして酒は禁止を指します。禅宗の証ですから、問答致しますの看板です。都内ではこの看板を出しているお寺さんは少なくなりました。
■喝(かつ);大声を出すこと。大声で叱ること。特に、禅宗で励まし叱るときの叫び声。また、大声でおどすこと。「喝采・喝破・恐喝」。
■寺男(てらおとこ);寺で雑役をする下男。
■寺の隠語(てらのいんご);酒のことを『般若湯(はんにゃとう)』という。マグロの刺身は『赤豆腐』、「卵は『御所車』、君が中におわします。アワビが『伏せ鐘』、サザエが『ゲンコツ』、タコが『天蓋』、本堂の中央に下がっている飾りに似ているから(右写真・人天蓋)。カツ節は『巻紙』、書く(カク)と減るから、ドジョウは『踊っ子』です。囲っている女性、または奥様を『大黒様』、豆腐を『寺肴』といいます。でも、現在では余り使われない言葉もあります。
■白鳥(しらとり);首の長い白色の磁器。ドジョウを入れるときは大変だが出すときはスルリと出せる。
■永平寺(えいへいじ);福井県吉田郡永平寺町にある曹洞宗の大本山。山号は吉祥山。寛元2年(1244)道元の開山。波多野義重の創建。初め大仏寺と称したが、2年後に永平寺と改称。道元没後、その門流の内紛のために荒廃したが、寂円(1207~1299)門流によって維持され、江戸時代には大本山となった。
■鼠の衣(ねずみのころも);薄汚れて鼠色になった衣。
■問答(もんどう);問うことと答えること。質問と応答のやりとり。ここでは禅問答、禅家で修行僧が師に疑問を問い、師は即座かつ簡潔に回答する。その逆に、師が弟子の進み具合を問答によって試す。
■信州丹波島(しんしゅう_たんばじま);信州は信濃の別称。現在の長野県。丹波島は架空の地名。
■角卒塔婆(かくとうば);卒塔婆は板で出来ているが、柱状の物。こんな角材でスネを叩かれたら、歩けなくなります。
■袈裟(けさ);インドで僧侶の服。中国・日本では、僧侶が左肩から右腋下にかけて衣の上をおおう長方形の布を意味するようになった。色は青・黄・赤・白・黒の5正色を避け、いくつかの布をつぎあわせて作る。大小によって、5条・7条・9~25条の3種に分つ。国・宗派によりその種類を異にし、天台・真言・真宗などで用いる輪袈裟(ワゲサ)、禅宗で用いる威儀細(イギボソ)・掛絡(カラ)など略式のものもある。法衣。功徳衣。無垢衣。卓衣。けさぎぬ。落語「錦の袈裟」に詳しい。
■モウス;僧侶のかぶる一種の頭巾。牟子。右図の一休禅師も被っています。
■払子(ほっす);(唐音)
長い獣毛を束ね、これに柄を付けた具。もとインドで蚊や蠅を追うのに用いたが、のち法具となり、日本では禅僧が煩悩・障碍を払う標識として用いる。白払。払塵。決してハタキではありません。右下写真。
■「東海に魚あり。尾も無く頭も無く、中の支骨(しこつ)を絶つ」;
■ 「法華経五字の説法は八遍に閉じ、松風の二道は松に 声ありや、松また風を生むや。有無の二道は禅家悟道にして、いずれが理なるやいずれが 非なるや」;
では、お寺の鐘があります。時を知らせるのに鐘を突く、では鐘が鳴ったのか、撞木が鳴ったのか?
・犬に仏性(ぶっしょう)はあるか;解、無門関で趙州(じょうしゅう)和尚は答えた、「無」。その粗、仏陀は言っている「一切衆生、悉有(しつう)仏性」、すなわち「有」。ん?どっち! そんな事答えられない、饅頭を割って右が美味いか、左が美味いかを言うのと似ている。いえいえ、人を見て言い分けています。
・八遍(はっぺん);私も複数のプロ(?)の禅師に伺いましたが解らないとの返事。上記の説明でも「八遍とは意味不明である。」と言っているように、彼が解らないのでは無く、仏教用語の中にこの言葉は無いのです。この噺を作った作者が間違っていたのか、落語は口伝ですから後世伝わって行くうちに間違ってしまったのか、その辺は解りません。また、置き換えるべき的確な言葉もありません。お陰で、禅の話を紐解いてバラバラにすることが出来ました。
・問答を申し込んだ僧を『旅僧』と志ん朝は言っていますが、落語家によっては名前を『沙弥托善』と名乗っています。
■狐拳(きつねけん);ジャンケンと同じ拳の一種。二人相対し、両手を開いて両耳のあたりに挙げるのを狐、膝の上に両手を置くのを庄屋、左手の拳を握って前に出すのを鉄砲(狩人)といい、狐は庄屋に勝ち、庄屋は鉄砲に勝ち、鉄砲は狐に勝つとする。藤八拳(トウハチケン)。庄屋拳。
■十法世界(じっぽうせかい);迷いと悟りの全世界を10種に分けたもの。すなわち地獄界・餓鬼界・畜生界・修羅界・人間界・天上界(以上迷界)と声聞(シヨウモン)界・縁覚界・菩薩界・仏界(以上悟界)。天上界までの六界は迷いの世界でこれを六凡と称し、声聞界からは悟りの世界でこれを四聖という。十法界。
・十方世界(じっぽうせかい);十方に無量にあるという諸仏の浄土をいう。またあらゆる世界の意。十方は、東・西・南・北と四維(維は一方と一方を維ぐ意。東北・東南・西南・西北)、それに上・下とをいい、四維を除いたのを六方という。十方はすべての方向を指すことから、時間軸を含めて十方世界で全ての世界。
■五戒(ごかい);在家の守るべき5種の戒律。不殺生(生き物を殺してはいけない)・不偸盗(他人のものを盗んではいけない)・不邪淫(不道徳な性行為を行ってはならない)・不妄語(嘘をついてはいけない)・不飲酒(酒を飲んではいけない)。どうしても守れない戒律が私にはあります。
■三尊の弥陀(さんぞんのあみだ);三尊仏。中央の中尊および左右に侍立する脇侍(キヨウジ)の総称。阿弥陀三尊は阿弥陀・観音・勢至。釈迦三尊は釈迦・文殊・普賢。薬師三尊は薬師・日光・月光。
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