落語「おらが火事」の舞台を行く
古城一兵作
■古城一兵(こじょういっぺい);この噺「おらが火事」の作者。昭和38年NHK落語台本懸賞募集に入選。それ以後、数多くの落語を書き下ろしています。「おらが火事」は昭和41年NHK演芸台本研究会で発表されたものです。まもなく五代目古今亭今輔さんに演じてもらったもの。
■菊富士ホテル火災(きくふじホテルかさい);1966年(昭和41年)3月11日未明、群馬県の水上温泉にあった菊富士ホテルで発生した火災。
■宿屋(やどや);旅館という語は中国から伝来した言葉であるが、明治時代になってそれまでの宿泊施設よりもより高級な施設を意味する言葉として使われ始めた。ただし、この語が広く用いられるようになったのは昭和になってからで、明治における宿泊施設の一般的呼称は〈宿屋〉であり、法律上の用語としても宿屋が用いられた。明治時代には警察令による〈宿屋営業取締規則〉があり、同規則によれば、宿屋は、旅人宿、下宿、木賃宿の3種に分類されていた。この噺では、温泉地にある宿屋。温泉を引いている宿屋、を指しています。通常は和式の構造及び設備を主とする宿泊施設のことを指す。日本旅館ともいいます。
政府登録国際観光ホテル・旅館(せいふとうろく こくさいかんこう りょかん)とは、1949年(昭和24年)12月24日に施行された国際観光ホテル整備法(昭和24年12月24日法律第279号)に基づき、観光庁長官が登録を行った旅館やホテルのこと。全国に旅館が1996、ホテルが1127ある。(平成16年度 総合政策局観光地域振興課調べ) 下記の要件を満たしたものが承認される。
■山師の玄関(やましのげんかん);山師(詐欺師)が玄関の構えを立派にすることから、実質がなくて外観ばかりを立派に飾ることをいう。
■旅行の心得(りょこうの こころえ);旅をすることでトラブルや持ち物についての注意書き帳。最近は国内旅行でなく、海外旅行についての注意書きが多くなりました。
江戸時代では、『旅行用心集』の中で蘆菴先生が提唱する旅の心得は、実に61ヶ条にもおよぶ。まずは榎並紀行氏
(えなみのりゆき)の旅日記をクリックしてご覧下さい。
■履き物を見る(はきものをみる);旅館だけで無く、客商売でしたら足元の履き物を見ます。『足元を見る』というのはここから来ているのじゃないかと思う程です。この噺のように、新品の靴を見せたり、革靴でビニールは使ってない本革だとか言っています。上衣とちぐはぐな靴を履いていたり、くたびれた靴を履いていたりすると、信用を落とします。
■込み込み(こみこみ);税・サービス料込みの値段。税金でも消費税、入浴税、飲食税が賦課されたり、サービス料として10%乗せられたりしますが、それらの全てを含んだ料金。買い物をして予算内に収まったな、と思ったら消費税が加算されて慌てることがあります。そんなことが無いように・・・。
■貴重品袋(きちょうひんぶくろ);昔はそのような袋に入れてフロントの金庫に預けたんですね。自動車の中に忘れ物があって、車のカギも預けて仕舞ったのでフロントまで頭を下げに行ったことも有ります。現在は各部屋に金庫が有ってそこに仕舞うようになっています。
■宿帳(やどちょう);これも旅館業法で決まっていて、住所氏名同伴者、どこから来て何泊して何処に行くのかを書き込む帳票。ホテルではフロントで書いてOKが出ると部屋を紹介してくれますが、日本旅館では各部屋に宿帳を持って来ます。
■非常口(ひじょうぐち);火災・事故など、非常の場合に避難するために設けた出入口。上層階で有れば非常階段が付いていますので、それを使って地上まで降ります。消防法によって細かい仕様が決まっていて、出入り口の上には『非常口』の照明サイン看板が着いています。下図。
■避難訓練(ひなんくんれん);これも消防法で決まっていて、 自衛消防隊を組織して責任者を置いて定期的に訓練を実施しなければなりません。また、その報告書を消防署に提出しなければなりません。
■麻雀(まーじゃん);私の若い頃は旅館も観光ホテルでも、貸し出し用に麻雀卓や将棋、碁板は貸し出してくれました。当たり前のサービスでした。また、チョットしたスペースには卓球台が置いて有ったものです。
■非常階段(ひなんかいだん);避難階段または特別避難階段の設置義務については、建築基準法施行令第122条に規定されています。非常階段は屋外に露出しているものと、耐火壁に囲まれた屋内階段が有ります。どちらも、屋内から階段に通ずる出入り口には、防火戸を設置し、戸の部分は避難方向に開くことができること。また、階段は耐火構造とし、地上まで直通すること。となっています。
■将棋倒し(しょうぎだおし);雑踏の中で一人または数人がバランスを崩して倒れたことによって、周辺の者が連鎖的に転倒する事故。次々と連鎖的に人が倒れる様が遊びの「将棋倒し」に似ていることから、上記の事故に対する慣用的な呼称となった。多くの人が係わることによって発生・被害が拡大する群集事故の一種。階段等の段差部で発生しやすく、段差のある場所で発生した場合、死者が出る大事故になる危険性が高い。転落による衝撃が大きいこと、高低差により下にいる場合は上方の転落者の体重を累積的に受けること、段差の角に体をぶつけること等が原因。
■支配人(しはいにん);法律上定められた商業使用人の一。営業主に代り、その営業に関する一切の裁判上または裁判外の行為をなす権限を有する者。マネージャー。番頭。
■調理場(ちょうりば);厨房。料理を作るところ。割烹(カツポウ)。
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