落語「月宮殿・星の都」の舞台を行く 六代目笑福亭松鶴の噺、「月宮殿・星の都」(げっきゅうでん・ほしのみやこ)より
■月宮殿(げっきゅうでん);中国の伝説では、宮殿があり、そこには不老不死の薬を飲んだあと月へと逃げかくれた嫦娥(じょうが)が住んでいるとされる。また巨大な桂の木が生えているともされ、そこでは罰として月宮殿へ流された呉剛(ごこう)という人物が永遠にその木(月桂、げっけい)を伐っているとされている。月桂は沙悟浄の持つ得物「降妖宝杖」の素材でもある。
落語では、地上へ墜落してしまった雷神などが登場する。ウナギをつかまえようとして浮かび上がり月にたどりつく内容。『月宮殿星都(げっきゅうでん ほしのみやこ)』とも。二世曽呂利新左衛門の口演などがある。
■竜宮界・竜の都(りゅうぐうかい・りゅうのみやこ);海の底に有る都・竜宮界。落語「竜宮」に詳しい。
■天神橋(てんじんばし);大川に架かる天神橋筋(大阪市道天神橋天王寺線)の橋で、大阪市北区天神橋1丁目と大阪市中央区北浜東の間を結んでいる。車道は全線南行き一方通行となる。
ここの橋下の淀川の水十六杯飲んでしまった徳さんだった。
■淀川の水十六杯(よどがわの-);江戸落語にも同じシーンがあります。落語「鰻屋」で、留さんが飲みたさ一心で兄貴分に付いて隅田川を渡り、吾妻橋下に降りて隅田川の水を飲むくだりがあります。
■鰻を掴む(うなぎをつかむ);鰻はヌルヌルして掴みにくいもの。江戸落語にも「鰻屋」、「素人鰻」があります。どちらも鰻を掴んで右往左往、「どちらに行きますか?」と聞けば「前に回って鰻に聞いてくれ」。素人には難しい作業です。
・鰻(うなぎ);ウナギ科の硬骨魚。細い棒状。産卵場は、日本のウナギは台湾・フィリピン東方の海域、ヨーロッパ・アメリカのウナギは大西洋の中央部の深海。稚魚はシラスウナギ・ハリウナギなどと称し、春に川に上り、河川・湖沼・近海などに生息。また養殖も、浜名湖など東海・四国地方・宮崎で盛ん。蒲焼として珍重、特に土用の丑の日に賞味する。(広辞苑)
・蒲焼き;焼いた色が紅黒くて、カバノキの皮に似ているから樺焼きであるとか、鰻を焼いた時、その香りが実に早く匂うので香疾(かばや)焼きと言われた。この両説とも間違い。鰻の蒲焼きは、昔、鰻の口から尾まで竹串を刺し通して塩焼きにした。この形が、蒲(がま)の穂に似ているから蒲焼きと言ったものの訛りである。(食べ物語源辞典・清水桂一編)
・鰻屋;江戸の名物に、「寿司」、「天麩羅」と「鰻」があった。江戸前の海で捕れるから鰻を江戸前と言った。江戸前と言えば鰻の事で、時代が下がって、東京湾で捕れたどんな魚でも江戸前というようになった。蒲焼きにして売られ、天明の末頃には蒲焼きにご飯を付ける「つけめし」が始まった。文化ごろに鰻丼の前身の「うなぎめし」が大野屋から売る出された。この鰻飯は、芝居勧進元の蒲焼き大好きの大久保今助という男が、冷たい蒲焼きはまずいので飯の間に挟んで持ってこさせたのが起源だと言われている。これを「中いれ」と称し、大野屋では64文から売り始めたが、100文、200文(職人の手間が470文の時代)の高級品も出来るようになった。寛永元年には90軒の蒲焼き店を紹介しているが、すぐに200店を越えるようになった。
■大屋根(おおやね);下屋(ゲヤ)・庇(ヒサシ)などに対して、主屋の屋根をいう。一つの屋根を複数の階にかけることによって傾斜のある天井面ができるが、この部分を収納スペースにしたり吹き抜けにするなど、室内空間の演出に利用することが多い。
■海に千年、川に千年、沼で千年、三千年の劫経た(こぉへた)鰻;
■天上へ昇天(てんじょうへしょうてん);そらのうえ。そら。仏教では天国をいう。天上界。そこに昇天(天に昇る事。死ぬ事)すること。
■順慶町(じゅんけいまち);大阪人は「じゅんけまち」と言うことが多い。順慶町通は筒井順慶の屋敷があったことに由来し、江戸時代には新町遊廓へ至る新町橋が架けられ、夜市で賑わっていた。二・七の日の夜店が名高かった。塩町通には砂糖問屋が多く、1925年(大正14年)には大阪砂糖取引所が設置された。 町名変更で現在、大阪市中央区南船場1~4となっている。
順慶町夜見世の図(浪花名所図会) 大阪府立中之島図書館蔵
■丼池筋(どぶいけすじ);大阪市中央区西部を南北に通じる街路。心斎橋筋の東側の街路で、大阪の商業中枢地である船場を貫く。かつては高級家具問屋街として知られたが、第2次世界大戦の大火後繊維類に転換、現金取引の卸小売で繁栄し、大阪の代表的な繊維問屋街として有名となった。船場の都市再開発計画に伴い、現在は一部が船場センタービルに移転し、変容している。 「丼池」の地名は、付近に芦間(あしま)の池というどぶ池があったからで、また、俗称ですので地図上には表記されていません。
■中天(ちゅうてん);天の中心。天心。なかぞら。中空。
■三十三天(33てん);忉利天(とうりてん)。(梵語 Tr yastri a
三十三天と漢訳)
六欲天の第2。須弥山(シユミセン)の頂上にある。中央に帝釈天(タイシヤクテン)の止住する大城があり、その四方の峰に各8天があり、合して三十三天となる。
■不死不生界(ふしふしょうかい);南伯子葵との問答で、三日目には天下を忘れ、七日目には物の存在を忘れ、九日目には自分が生きていることを忘れた(無我の境地)。生を忘れるようになってから、朝徹の(朝の光が闇をつらぬくような豁然大悟した)境地、見独の(唯一絶対の真理に刮目した)境地、さらに、古今の時間を超越し、不死不生の境地に至り、(えいねい)に到達する。
■ベニガラ(紅殻);(ベンガラに当てた漢字「紅殻」の訓読から)
、(インドのベンガルに産したからいう) 帯黄赤色の顔料。塗料・磁気材料・窯業剤・研磨剤に用いる。成分は三酸化二鉄。化学式Fe2O3。紅殻(ベニガラ)。
■鬼(おに);想像上の怪物。仏教の影響で、餓鬼、地獄の青鬼・赤鬼があり、美男・美女に化け、音楽・双六・詩歌などにすぐれたものとして人間世界に現れる。後に陰陽道の影響で、人身に、牛の角や虎の牙を持ち、裸で虎の皮のふんどしをしめた形をとる。怪力で性質は荒い。民話の中には良い鬼や、ドジな鬼などが出てくる。
■ヘソ(臍);腹部のまん中の小さなへこみ、またはデベソ。臍帯(サイタイ)の取れた跡。
■「雷の玉子」
■久米の仙人(くめのせんにん);俗に久米寺の開祖と伝える人。大和国吉野郡竜門寺に籠り、仙人となったが、飛行中吉野川に衣を洗う若い女の脛(ハギ)を見て通力を失い、墜落した。その女と一緒になり、都造りの材木運びに通力を取り戻し、材木を空に飛ばして仕事を助け、褒賞に免田三十町を得て久米寺を建立したという。今昔物語集・徒然草などに出る。
■五右衛門(ごえもん);石川 五右衛門(いしかわ ごえもん、生年不詳 - 文禄3年8月24日(1594年10月8日))は、安土桃山時代の盗賊の首長。文禄3年に捕えられ、京都三条河原で煎り殺された。見せしめとして、彼の親族も大人から生後間もない幼児に至るまで全員が極刑に処されている。
従来その実在が疑問視されてきたが、イエズス会の宣教師の日記の中に、その人物の実在を思わせる記述が見つかっている。
■ヘソの仇は長い杓(長崎)で討ったんや;オチのこの言葉は「江戸の敵を長崎で討つ」のもじり。この言葉、江戸の敵を長崎で討つとは、意外な場所や筋違いなことで、以前受けた恨みの仕返しをすることのたとえ。また、関係のない者を討って気を晴らすことのたとえ。
落語「長崎の赤飯」でも使われています。
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