落語「狐芝居」の舞台を行く 桂吉朝の噺、「狐芝居」(きつねしばい)より
■桂吉朝(かつら きっちょう);本名:上田 浩久(うえだ ひろひさ)、1954年11月18日 - 2005年11月8日)は、大阪府堺市出身の落語家。出囃子は、当初『芸者ワルツ』、のちに『外記猿』。
1988年 「NHK新人演芸コンクール」優秀賞
吉朝最後の高座、「弱法師」(菜刀息子) ↓ここをダブルクリックすると聞けます。
■小佐田定雄(おさだ さだお);1952年2月26日 - )は、日本の演芸研究家、演芸作家、落語作家、狂言作家。関西演芸作家協会会員。本名、中平定雄。大阪市生まれ。1974年に関西学院大学法学部卒業。妻は、弟子のくまざわあかね。この噺「狐芝居」の原作者。
■紀尾井町(きおいちょう);尾上松緑(おのえしょうろく)の屋号。千代田区紀尾井町で、松緑が住んでる土地、地名で声を掛ける。
■神谷町(かみやちょう);中村芝翫(なかむらしかん)の屋号。港区虎ノ門五丁目にある地下鉄日比谷線の駅名から芝翫の住んでる土地、地名で声を掛ける。
■尼崎センタープール前;阪神電車の駅名。尼崎競艇場がある。ちなみに、吉朝宅の最寄り駅、長すぎてこれでは地名で呼んでくれない。八代目桂文楽が出てまいりますと「黒門町ッ」 なんてね、正蔵師匠ですと「稲荷町ッ」 なんて声が掛かる。以上三駅(町)ともマクラからですが、概略ではカットしています。
■宿(しゅく);街道筋にある宿泊が出来る宿場。宿駅。東海道では53宿有ります。
■三里半(3りはん);尺貫法の距離。1里は約4kmで計14km。平地では1里を1時間で歩きますから、3時間半掛かりますが、山道なのでその何割増しかになります。
■道中師(どうちゅうし);道中で、旅人などの財物を欺き盗む者。ごまのはい。元来、ある区間を往復して、他人の用を足すことを業とした人。飛脚・宰領の類。
■護摩の灰(ごまのはい);高野聖(コウヤヒジリ)の扮装をし、弘法大師の護摩の灰と称して押売りした者の呼び名から転じ用いられたという。
旅人らしく装って、旅人をだまし財物を掠(カス)める盗賊。胡麻の上の蠅は見分けがつきにくいことから「胡麻の蠅」とも。
■尾上多見蔵(おのえ たみぞう);歌舞伎役者の名跡。屋号は音羽屋。定紋は吉菱。
■秋の日は釣瓶落とし(-つるべおとし);釣瓶を井戸に落すように、まっすぐに早く落ちること。転じて、秋の日の暮れやすいことにいう。
■シャギリ;芝居の幕間(まくあい)に使う鳴りもんでございます。一幕終わるごとに太鼓・大太鼓・能管で奏する。寄席でも使い、中入りなどでお客さんがロビーなどでくつろいでいるときならされる。
■鳥屋(とや);歌舞伎劇場で、役者が花道から舞台へ出る前に待期する部屋。揚幕の後ろにある。
国立劇場の花道と奥に見える鳥屋。そこに掛かった揚幕。
■仮名手本忠臣蔵・四段目、判官さん切腹の場;歌舞伎・仮名手本忠臣蔵は全十一段有って、元の事件は、江戸城松の廊下で吉良上野介に切りつけた浅野内匠頭は切腹、浅野家はお取り潰しとなり、その家臣大石内蔵助たちは吉良を主君内匠頭の仇とし、最後は四十七人で本所の吉良邸に討入り吉良を討ち、内匠頭の墓所泉岳寺へと引き揚げる。この元禄14年から15年末(1701 - 1703年)にかけて起った赤穂事件は、演劇をはじめとして音曲、文芸、絵画、さらには映画やテレビドラマなど、さまざまな分野の創作物に取り上げられている。赤穂事件を「忠臣蔵」と呼ぶことがあるが、この名称は『仮名手本忠臣蔵』をもととする。
四段目概略、四段目は異名を「通さん場」ともいう。その名の通り、この段のみ上演開始以後は客席への出入りを禁じ、遅刻してきても途中入場は許されない。出方からの弁当なども入れない。塩冶判官切腹という厳粛な場面があるためである。成句「遅かりし由良之助」のもとになった大星由良助はここで初めて登場する。
(花献上の段):かほよ御前が夫判官のために花を誂えているところに、原郷右衛門と斧九太夫が参上する。
切腹する塩谷判官と大星由良之助。三代豊国画
石堂は由良助に慰めの言葉をかけて帰り、薬師寺は休息するといって奥へ入った。上使の目を憚っていたかほよ御前はそれを見て、とうとうこらえきれず「武士の身ほど悲しい物のあるべきか」と判官のなきがらに抱きつき、前後不覚に泣き崩れるのだった。判官の遺骸は塩冶家菩提所の光明寺に埋葬するため、駕籠に乗せられるとかほよも嘆きつつそれに付き添い館を出て、光明寺へと急ぐ。
主な登場人物
■狐火(きつねび);暗夜、山野に見える怪火。鬼火・燐火などの類。狐の提灯。
■桟敷も平場も(さじき ひらば);桟敷:劇場・相撲場などで、板を敷いて土間(ドマ。劇場の平場)より高く構えた見物席。江戸時代、芝居小屋では土間の左右に上下2段の桟敷席を構えた。桟敷席の方が正面の平場より料金は高かった。
芝居小屋の内部。右が舞台で回り舞台が有り、その前の客席が平場、下手奥に桟敷席が見える。その手前に花道が有り、見えませんが左奥に鳥屋が有ります。当然上手側の写真手前にも桟敷席があります。
■上使(じょうし);幕府・藩などから上意を伝えるために派遣された使い。石堂右馬之丞(いしどううまのじょう):塩冶家に訪れた上使。判官に対して好意的な上使。
薬師寺次郎左衛門(やくしじじろうざえもん): 同じく塩冶家に訪れた上使。師直と親しくしている人物で、判官に対して冷たい。
左から、長羽織を着けた判官。 中央、上意を伝える石堂。 右、薬師寺。
■長羽織(ながばおり);丈の長い羽織。普通、丈がひざ下に及ぶものをいう。「長羽織りゾベラゾベラと召され」と皮肉を言われる。この下に切腹用の白い裃を着けていた。
■伯州(はくしゅう);伯耆(ほうき)国(鳥取県西部)の別称。
■九寸五分(くすんごぶ);刀の長さによっていう、九寸五分(約30cm)の短刀。鎧通(ヨロイトオシ)。切腹に一番似合う長さの短刀。
九寸五分。乃木希典夫人が使った、殉死の短刀。 乃木邸にて。
■み台様(みだいさま);大臣・大将などの妻の敬称。
■吉右衛門狐(きちえもんぎつね);歌舞伎役者の中村吉右衛門を模した狐役者。
■トンボ返り(とんぼがえり);(トンボが勢いよく飛びながら、急に向きをうしろにかえることから)
空中で体を上下1回転させること。宙返り。
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