落語「味噌蔵」の舞台を行く とぼけた味の春風亭柳好の噺、「味噌蔵」(みそぐら)
■味噌田楽(みそでんがく);豆腐やこんにゃく、茄子や里芋などを串に刺し、砂糖や味醂を配合し柚子や木の芽などで香りをつけた味噌を塗りつけて、焼いた料理。
「摂津名所図会」より住吉御田祭式其一「田楽法師舞踏曲」
第一本殿の前で相対しているのが田楽法師。
左図:「木の芽田楽」
■目塗り(めぬり);「火事息子」、「ねずみ穴」にも登場しますが、蔵の窓・扉の隙間を防火用に土などで塗り固めること。目塗り用に粘土をたるに詰めたものを「用心土」といい、火事の多い江戸では蔵持のどこの商店でも必ず常備していました。
右図:目黒行人坂火事絵“土蔵窓の目塗り”
■蔵は江戸時代の耐火建築物;昔の商家の火事に対する用心ぶりがよく分かる一席ですが、頻繁に起こる江戸の火事への対策として、さまざまな手立てが取られていた。防火用の建物としては、土壁で塗り込めた塗屋造りなどが推奨されて、代表格は大きな商家が商品や貴重品などを保管していた土蔵です。四面の壁を土と漆喰(しっくい)で塗り固めて耐火構造にしたもので、壁厚は30cm(1尺)あったという。窓や出入り口は小さく、壁が厚くなっていて、出入り口は二重の戸でできている。外側が開き戸の「戸前(とまえ)」で、その内側に「裏白戸(うらじらど)」という防火用の引き戸がある。その間に網戸があって、風通しをする際に中に保管している米を狙うねずみよけなどに使っていた。いざ火事が起きたら、窓や扉を閉めて、さらに隙間を練り土で目塗りした。この目塗りを味噌でやれと言ったのがこの「味噌蔵」。目塗りを怠って火災に遭ってしまうのが「ねずみ穴」という落語。商家によっては、床下に穴を掘って「穴蔵」をつくり、そこに貴重品を投げ入れて火災から守った。その穴蔵に泥棒が落ちるのが「穴どろ」という落語。
■けちん坊のマクラ;柳好はマクラで、
火を起こして火事見舞客に暖を取ってもらおうと思っていた。主人が「前の家が火事になって燃えたんだ、おきがいっぱい有るのだから、すくってきなさい」。小僧が帰ってきて、前の家で怒られた。「人の家が災難に遭ったのに何事だ」と、主人は平然として「ケチだね。もらうな、もらうな。今度家で火事を出しても火の粉もやらない」。
扇子は1本有ったら10年は使えるという。半分開いて使い、5年したら、もう半分を開いて使うと10年使える。それを聞いた男は「もの使いが激しい人だね。私だったら一生使います。半分開くようなケチはしません。全部開いて、顔を振ります」。
■味噌(みそ);調味料のひとつ。大豆を主原料に、米または大麦、大豆の麹と塩とをまぜて発酵させて製したもの。赤味噌・白味噌などの種類がある。
ウイキペディアに面白いことが載っているので紹介します。
■吝い(しわい);金銭などを出し惜しみするさま。けち。しみったれ。吝嗇(りんしょく)。落語「秋刀魚火事」に出てくる地主の油屋さんの旦那も同じ仲間です。
■サツマイモ5貫目(5かんめ);薩摩芋を目の前に置いておいて、チビチビやるのが好きだと言います。商家の奉公人らしいです。貫は尺貫法の目方の基本単位。1貫は3.75kg。1000匁。5貫は18.75kg、大変な量で見ているだけで胸が詰まりそうです。
■深川に相撲甚句に磯節(ふかがわ・すもうじんく・いそぶし);深川は住吉踊り(上図摂津名所図会の中に風俗が描かれています)の派手な伴奏曲、他に曲で「かっぽれ」もある。落語「五月雨坊主」に詳しい。
■手代(てだい);頭に立つ人の代理をなす者。中間管理職。江戸時代の商家では番頭と小僧との中間に位する身分であった。小僧は上方では丁稚とよばれた。
■割前(わりまえ);割前勘定。数人の者が金額を等分に出し合って勘定の支払いをすること。割り勘。
■二、三丁焼けて(2.3ちょうやけて);豆腐屋は田楽の数を言っているのですが、旦那は距離の2.3丁と勘違いした。距離1丁(1町)は60間。約109m強。2~300mの距離と言えば江戸の火事では直ぐそこです。
■火事(かじ);「火事喧嘩伊勢屋稲荷に犬の糞」と言われるほど江戸には火事が多かった。江戸では常に防火には気を使っていた。特に冬場の火事は北風に煽られ、大火になることが多かった。
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