落語「権助提灯」の舞台を行く 立川談志の噺、「権助提灯」(ごんすけじょうちん)
■提灯(ちょうちん);伸縮自在な構造で細い割竹等でできた枠に紙を貼り底に蝋燭を立てて光源とするもの。 内部に明かりを灯し、紙などの風防を通して周囲を照らす。「提」は手にさげるという意味で、携行できる灯りを意味する。いわば昔の懐中電灯で、中に蝋燭を点して持ち歩いたが、現在では祭礼の際を除くと、日常の場でこのように使われることはほとんどない。 近年は、竹ひごや紙の代わりにプラスチックのシートを使い、蝋燭の代わりに電球を使って、主に祭りなどのイベントや看板として使用されることが多い。インテリアや土産物などとしても販売されている。落語「提灯屋」に詳しい。
・提灯持ち;江戸の街は街灯が有るわけで無く、家々では雨戸を立てて暗い蝋燭の明かりが外まで漏れることも無く、真っ暗であった。満月の夜ぐらいは、ある程度の明かりは有ったが、暗いので提灯は必需品であった。大店の旦那は提灯持ちとして小僧や釜焚き男の権助に提灯を持たせた。
日本文化で特筆しなければいけない物に、使わないときには小さくしまえると言う便利さです。例えば、『夜具』はたためば小さくなって押し入れにしまうことが出来ます。西洋文明ではベットがありますが、一つ部屋を占領して、寝室としか利用できません。この噺の『提灯』も使うときは必要な大きさになりますが、使わないときはたたんで小さくなって場所を取りません。終戦後まであった『ちゃぶ台』も食事をするときだけ出して、食卓としました。『屏風』もしかり、使うときは広げて目隠しや背景としますが、使わないときはたたんで、部屋の隅に立てかけておけば場所ふさぎにはなりません。着物でも折りたたんであれば、折り紙のように平らな一枚になりますが、着れば立体的なフォルムになります。小さな部屋を多目的な利用方法が出来るのも日本家屋の特徴で、部屋の間仕切りの襖を開ければ、または取り外せば広いワンルームとして活用できます。
■お妾さん;関西では「お手掛さん」、関東では「お目掛さん」、どちらも同じ事ですが、手を掛けるのと目を掛けるのでは、ちょっとニアンスが違います。どちらがイイのでしょうか。 桂庵というシステムがあって、色々な奉公先を世話していた。
・婆やとチン(犬);お妾さんを一人で住まわせるようなことは、金持ちはさせなかった。婆やさんは家の細々とした事やお妾さんの世話をした。お妾さんは座敷犬のチンを愛玩していた。
■悋気は女の慎むところ、疝気は男の苦しむところ;悋気(りんき)=ヤキモチは女性が慎まなくてはいけないこと。疝気(せんき)=下腹部の痛みで男が苦しむこと。落語「疝気の虫」に詳しい。
■火事(かじ);江戸の街は火事によく見舞われた。特に冬場の火事は北風に煽られて大火になることが多く、江戸っ子は火事には大変気を使った。江戸の名物に「武士鰹大名小路広小路、茶店紫火消錦絵、火事に喧嘩に中っ腹
」と言う言葉があり、火事が入っていた。落語「二番煎じ」に詳しい。
■権助(ごんすけ);キャラクターが出来上がっている与太郎さんや甚兵衛さんと同じように、落語国では権助と言えば地方から出てきた、釜焚き男の代名詞で、キャラクターが決まっています。山出しの不粋で融通が利かない男ですが、力持ちで正義感も持ち合わせています。落語「木乃伊取り」にも出てきます。
2015年4月記 前の落語の舞台へ 落語のホームページへ戻る 次の落語の舞台へ |