落語「団子兵衛」の舞台を行く 六代目桂文治の噺、「団子兵衛」(だんごべい)より
■木戸(きど);町裏へ入れば粗末な造作の借家、いわゆる長屋がありました。
回りに目を向けると、各町内の間に木戸があり、木戸番を置くところも、店子が交代で番を務めるところもあった。夜は通行禁止で、木戸番に開けてもらわねばならない。
上図、『浮世床』より/式亭三馬 著。 木戸の上には看板が出ていて、左から『口入れ屋』『祈祷師』『先達さん』『常磐津の師匠』『灸点所』『易者』等の看板が見えます。中央の『#』は井戸があるという表示です。
■市川団十郎(いちかわ だんじゅうろう);は歌舞伎役者の名跡。屋号は成田屋。定紋は三升(みます)、替紋は杏葉牡丹(ぎょうよう ぼたん)。役者文様は鎌輪ぬ(かまわぬ)。 市川團十郎家は歌舞伎の市川流の家元であり、歌舞伎の市川一門の宗家でもある。その長い歴史と数々の事績から、市川團十郎は歌舞伎役者の名跡のなかでも最も権威のある名とみなされている。
初代(1660~1704):荒事を導入した。成田山新勝寺に近い所の出身で、父親は「乞食十蔵」「菰の十蔵」と呼ばれる侠客だったという。新しい物を生み出すが、舞台の上で他の役者に刺殺された。
左、七代目團十郎(部分) 早稲田大学演劇博物館蔵。 右、「かまわぬ」の手ぬぐい柄。
八代(1823~54):七代目の長男。10歳で名を継ぐが、美男で色気のある芸風が人気となり、水を浴びるとその水が1合1分(約2万5千円)で売れ、痰を吐くと女達が奪い合いでお守りとした。天保の改革で父が追放されると、茶断ちをして成田不動(蔵前=深川に遷される前)に日産して孝行の表彰を受ける。その後は人気の落ちた芝居町の復興に貢献した。大阪の芝居に行くが、そこで突然自殺した。予定外の上方芝居への出演で、江戸の座元に義理を立てたのだという。
★市川団子兵衛という役者はいないでしょうが、団子というのが歴代8人、現在の8代目(系統があって5代目と名乗っているの)は、九代目市川中車(香川照之)の息子で市川團子(香川政明)。
■歌舞伎『桜姫東文章』(さくらひめあずまぶんしょう);『桜姫東文章』は四世鶴屋南北作の歌舞伎世話狂言で、文化14(1817)年3月、河原崎座初演。
鎌倉新清水寺の僧清玄が、吉田家の息女桜姫に邪恋を抱いて破戒。寺を追放された後、執拗に桜姫につきまとい、忠義の奴淀平に殺されても、なおも怨霊と化して姫に取り憑くという筋。
現在でも坂東玉三郎らによって、しばしば上演される人気狂言。
歌舞伎『桜姫東文章』あらすじ
(発端 江の島稚児が淵の場)修行僧清玄は、稚児白菊丸と心中をはかるが、生き残ってしまう。
(序幕第一場 新清水の場)十七年後に話は飛ぶ。吉田家の息女桜姫は美貌ながらも生まれつき左手が開かない障害を持っている。そこへ父と弟梅若丸が殺害され、家宝「都鳥の一巻」の盗難と不幸が重なり、悲しみのあまり世をはかなんで出家しようと、新清水(鎌倉の長谷寺)にやってきたのであった。おりしも居合わせた高僧清玄坊は、姫を不憫に思い念仏を唱えると、姫の左手が開き香箱が現れる。そこには「清玄」と書かれてあった。それを見た清玄は十七年前の事を思い出し、香箱は白菊丸の形見の品、すなわち姫こそ死んだ恋人の生まれ変わりであることを知り愕然とする。皆が去った後、都鳥の一巻を狙う悪五郎は、姫の手が開いたことを知り仲間の釣鐘権助に縁組を求める艶書をことづける。
(序幕第二場 桜谷草庵の場)出家の準備のため草庵にいる桜姫のもとに釣鐘権助が艶書をもって出家をとどまらせに来る。権助は落とし噺を演じて姫や腰元たちを笑わせるうち、二の腕の釣鐘の刺青を見られてしまう。姫はとたんに態度を変え、腰元たちをさがらせて、権助に告白する。実は一年前屋敷に忍びこんで自分を強姦した男こそが権助なのであった。証拠が二の腕の釣鐘の刺青。姫はその時の快感が忘れられず、自身も二の腕に同じ刺青を彫っていた。「折助とお姫さま、とんだ夫婦だ。」と権助は姫に迫り二人はしっかと抱擁し愛を確かめ合う。だが、役僧の残月に見とがめられ権助は逃走。悪五郎もかけつけ大騒ぎとなる。そして姫のもっていた件の香箱から相手は清玄と決めつけられるが、なぜか清玄は一切弁明せず従容と女犯の冤罪を認める。
(二幕目第一場 稲瀬川の場)処罰され追放された桜姫と清玄が互いの境遇を悲しんでいる。権助との間にできた不義の子を抱き桜姫は今後の不安を述べる。清玄は因果の恐ろしさに心から姫の力になることを誓い、夫婦になろうと迫る。当惑する姫。そこへ悪五郎が出て自分の館に拉致せんとし、吉田家の忠臣粟津七郎と桜姫の弟松若が悪五郎一味と争ううち、悪五郎が天下の悪党忍の惣太と関係していることを知り、証拠の密書をめぐって争う。混乱の中桜姫は逃げ去る。
(二幕目第二場 三囲土手の場)それから数日が立った。なおも桜姫への思いが断ちがたい清玄は、雨のそぼ降るなか赤子を抱いて姫を探し求め、三囲神社の鳥居前まで来る。そこへ零落した桜姫も破れ傘をさしてさまよい出る。だが暗闇で互いに確認できない。清玄が焚いた火で、ようように二人は近づくが雨で火は消え、二人は相手を確かめられぬまま別れてしまう。
(三幕目 岩淵庵室の場)桜姫に恋焦がれるあまり清玄は病に倒れ、これまた女犯の罪で寺を追い出された残月と姫の腰元長浦が同棲する粗末な庵室に体を横たえている。そこへ近在の鳶の頭有明の仙太郎の女房、葛飾のお十が死んだ子の回向に来る。鼻の下をのばす残月に嫉妬する長浦。二人が争う物音に桜姫の子が泣き、皆赤子の養育に頭を抱える。だがお十は侠気を見せて赤子を引き取り家に帰る。これであとくされがなくなったと残月と長浦は青トカゲの毒薬を清玄に無理やり飲ませようと殴り殺す。二人は墓掘りとなっていた権助を呼び墓を掘らせる。
(四幕目 山の宿町権助住居の場)権助は大家となって裕福な暮らしをしているが、故あって自身の不義の子と知らず件の赤子を預かる羽目となる。そこへ桜姫が小塚原の女郎屋から戻ってくる。二の腕の刺青から、「風鈴お姫」の異名をとり人気者であったが、清玄の亡霊が執りついて大騒ぎとなり止むなく休業となったという。権助は寄合に出かけ桜姫一人となる。そこへ清玄の亡霊が現れ、清玄と権助は実の兄弟であること。そばにいる赤子が稲瀬川で生き別れた子であることを告げる。因果の恐ろしさに驚く桜姫。そこへ帰ってきた権助は酔いも手伝って、自分は盗賊の忍ぶの惣太であり、吉田家当主を殺害して都鳥の一巻を奪い、梅若丸をも殺害したことも白状する。桜姫は仇の血を引いた赤子を殺し寝込んだ権助も殺害する。
(大詰 三社祭礼の場)三社祭でにぎわう浅草寺雷門の前、父と梅若丸の仇を討ち都鳥の一巻を奪い返した桜姫と松若、お十、粟津七郎らが集まり大団円となる。
■店立て(たなだて);自分が今住んでいる所を追い出されること。大家の一存で決められる。
■四つ(よつ);時刻の表し方。現在の夜10時ごろ。
■芝居小屋(しばいごや);芝居を興行する建物。劇場。
■雲助(くもすけ);(住所不定で浮き雲のように定めないからとも、また、立場(タテバ=江戸時代、街道などで人夫が駕籠などをとめて休息する所。明治以後は人力車や馬車などの発着所、または休憩所)にいて往来の人に駕籠をすすめることが、蜘蛛が巣を張って虫を捕えるのに似ているからともいう)
江戸中期以後に、宿駅・渡し場・街道で駕籠舁(カゴカキ)・荷運びなどに従った住所不定の人足。「雲助駕籠」。
■投げ飛ばされて四つん這いになり踏みつけられてしまった団子兵衛;
仏に踏みつけられた鬼。東京国立博物館蔵。団子兵衛さん、鬼ではありませんがその無念が伝わってきます。
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