落語「宇宙戦争」の舞台を行く
   

 

 四代目桂米丸の噺、「宇宙戦争」(うちゅうせんそう=賢明な女性たち)より


 

 空飛ぶ円盤の大軍が現れ、近所のお婆さんは信州に疎開すると言う。

 一発で地球が半分になる爆弾だってあると言うが、 「でもちょうど残った所が信州なら助かるじゃありませんか」と取り合わない。

 やがて円盤から声が聞こえ交渉にはいるが、地球の女を全部くれと言うので、さあ大変。
 戦いになるが、地球の武器は役に立たない。不思議な光で女性だけを吸い込むので地下に隠れるが、「賢明な女性の皆さん。こんな地球の男で満足なのですか。我々は美しい女性しか求めていません」と呼び掛けると、自尊心の強い女性はみんな吸い込まれる。
 信州に行くはずのお婆ちゃんまで吸い込まれると円盤は消えてしまった。

 入れ替わりに現れた円盤は、男のいなくなった星から来た女性達。邪魔な地球の女を吸い込んで、代わりに降り立つと本当に美人ばかり。
 「星の女性はどうしてこんなにきれいなんだ」、「当然だよ。星はみんなスターだもの」。

 



ことば

星新一の「賢明な女性たち」を元にしたSF落語。桂米丸がレコードを出しているが、深町純がシンセサイザーで出囃子から挿入曲、効果音まで作った。正直、ありきたりの物に感じる。寄席で聞いた時は、「さあ戦争だ」と叫んだ途端に楽屋で太鼓と銅鑼・・・、「時代錯誤も甚だしい」と言うのがおかしかった。桂夏丸君が受け継いでいる。
 名作落語大全集 越智月久氏解説

 星新一の噺に、落語ばなし 第148話 「戸棚の男」が有ります。

星新一(ほし しんいち)
 1926(大正15)9月6日 東京市本郷区駒込曙町(現・東京都文京区本駒込)に、星製薬創業者・星一、精夫妻の長男として誕生。本名は、親一。
 祖父は東京大学名誉教授で人類学の第一人者、小金井良精、祖母は森鴎外の妹、喜美子。
 1950(昭和25)3月 東京大学大学院(農学部発酵生産学教室)前期修了。
 星製薬株式会社取締役社長を経て、1957(昭和32)年、同人誌「宇宙塵」2号6月号に発表した「セキストラ」が江戸川乱歩編集「宝石」11月号に転載され、商業誌デビュー。宇宙開発時代の到来と重なり、日本SF文学の旗手として脚光を浴びる。
 400字詰め原稿用紙にして10数枚程度のショートショートと呼ばれる小説形式を得意とし、当用漢字しか用いない平易な文章、時事風俗や固有名詞、性や殺人を描かない透明感のあるその作風は、年齢性別国籍を問わず広い読者層、とくに小中学生の子供たちに支持され、「ショートショートの神様」と呼ばれた。
 作品には、『ボッコちゃん』『ようこそ地球さん』『きまぐれロボット』などのショートショート集があるほか、インターネット社会を予見した『声の網』や少年の夢をめぐるファンタジー『ブランコのむこうで』などの長編、伝記も発表している。
 1968(昭和43)3月 『妄想銀行』および過去の業績に対して第21回日本推理作家協会賞受賞。
  生涯にわたり、1001編以上のショートショートを発表。晩年は、余計な描写や形容をすべて削ぎ落とした民話のような作品を書き、これまでのショートショートについても、「ダイヤルを回す」を「電話をする」に直すなど、少しでも長く読み継がれるように時代とともに古くなる表現の改訂作業に取り組んだ。本人は「寓話作家」と呼ばれることを好んだ。
 1997(平成9)12月30日午後6時23分、間質性肺炎により没す。享年71。 1998(平成10)その功績を称え、日本SF大賞特別賞が贈られる。
 星新一オフィシャルホームページより

「SF寄席」と題する「落語」と「シンセサイザー」のコラボは1979年にリリースされた。口演と脚色は「桂米丸」が担当、落語の原作は「星 新一」、シンセサイザー音楽は「深町純」が担当している。当時の世の中は「インベーダー・ゲーム」が流行り映画「未知との遭遇」や「スター・ウォーズ」が大当たり、まさに時代にマッチしたレコードだった。米丸の出囃子「金毘羅舟々」もシンセサイザーである。第一面に収録された「賢明な女性たち(宇宙戦争)」は女性たちが「UFO」に攫われていくという実にファンタジックな作品、昭和54年(1979年)の正月に「FM東京」で放送されている。
 カラヤニストのコンサート漫遊記 私の落語・演芸レコード・コレクションから

右写真、桂米丸 「宇宙戦争」CDジャッケット。

四代目 桂米丸(かつら よねまる);(1925.4.6. ~)横浜生まれ、 落語家。本名須川勇。都立化学工業専門学校卒業。1946年 五代目古今亭今輔に入門。師匠より新作落語の英才教育を受け,1947年古今亭今児を名のり二つ目で初高座。1949年真打ちに昇進し,四代目桂米丸を襲名。洗練された語り口が好評で,テレビの演芸番組の司会などでも活躍。入門から 60年以上新作ひと筋で,現代サラリーマンを主人公にした新作落語『相合傘』『玄関の扉』(古城一兵作),『狭き門』(大野桂作)などや,日常生活のおもしろいひとこまを描いた自作『レストラン』,映画を題材にした『ジョーズのキャー』などを口演。また 1968年には日本放送協会 NHKの実験番組で SF落語『宇宙戦争~賢明な女性たち』(星新一原作,神津友好脚色)を口演した。
 1976年落語芸術協会会長に就任,副会長の五代目春風亭柳昇の協力を得,協会運営にも尽力した。1999年会長を勇退し最高顧問に就任。1998年勲四等旭日小綬章受章。著書『落語家米丸笑いの引き出し』(2000)。弟子に,桂歌丸,桂米助らがいる。現在、現役最長老の落語家です。
 出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典

未確認飛行物体(みかくにん ひこうぶったい、英: unidentified flying object、UFO);その名の通り、何であるか確認されていない(正体不明の)飛行する物体のこと。 その正体は航空機など既知の人工物体、遠方のサーチライトや自然物(天体・雲・鳥など)の誤認も含まれうるが、略称のUFOは「エイリアンクラフト」(宇宙人などの乗り物)という意味で使われることが多い。
 本来、航空・軍事用語であり、当局で把握できていない航空機や観測気球、他国からのミサイルなど様々なものを指す。

    

左、1952年にアメリカ・ニュージャージー州で撮影されたアダムスキー型UFOの写真。 右、1970年にアメリカ、ニューハンプシャー州で撮影された葉巻型UFOと解釈されている画像。

宇宙戦争(1953年の映画) ;同名の『宇宙戦争』(うちゅうせんそう、The War of the Worlds)は、1953年のアメリカ合衆国の特撮映画。監督はバイロン・ハスキン、出演はジーン・バリーとアン・ロビンソン(英語版)など。H・G・ウェルズが1898年に発表したSF小説『宇宙戦争』を、ジョージ・パルとパラマウント映画が映画化した作品。
 第26回アカデミー賞では特殊効果賞を受賞し、編集賞と録音賞にノミネートされた他、ヒューゴー賞映像部門も受賞した。

 ある日、世界各地に隕石が降り注いだ。科学者のフォレスター博士は、カリフォルニアに落下した隕石の分析を依頼されるが、その大きさの割にはクレーターが小さいことを不思議に思う。フォレスターは現場にいた教師のシルヴィア、彼女の叔父で牧師のコリンズを頼って近くの街に滞在し、さらに詳しい分析をしようと試みる。落下現場に監視が付けられたその夜、隕石の中から突如アームのようなものが伸びて光線を放ち、監視の男達を焼き殺してしまう。空からまたも降ってきた隕石と、殺された男達の哀れな姿を見たフォレスター達は、軍隊の出動を要請する。 隕石の周囲を取り囲む軍隊の前に、恐るべきものが出現した。アームの正体は、火星人が地球侵略のために建造した戦闘兵器の一部だったのだ。牧師のコリンズは火星人との対話を試みるも光線を浴び、シルヴィアの前であえなく消え去った。ついに軍隊の総攻撃が始まるが、目に見えないバリヤーに守られた戦闘兵器は砲弾も何も通じず、軍は撤退を余儀なくされる。フォレスターとシルヴィアも退避を図るが、搭乗したセスナ機が途中で不時着し、荒野に放り出されてしまう。 何とか民家へと逃げこむ二人。だが彼等は、そこで新たに送り込まれた戦闘兵器と遭遇する。
 ウイキペディアより

 有名な宇宙映画では、未知との遭遇 (1977年、アメリカ)、E.T.(1982年、アメリカ)、インデペンデンス・デイ(1996年、アメリカ)等が有ります。



                                                            2021年8月記

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