落語「やぶ医者」の舞台を行く 五代目柳家小さんの噺、「やぶ医者」(やぶいしゃ)より
この「やぶ医者」は小さん自身もやらなくなった珍品音源です。昭和36年頃のTBS録音です。私もそれ以後、聞いたことがありません。
■医者
料金に公定相場はないので、自分で勝手に付けられましたが、名医ならば患者が門前市をなしますが、ヤブであれば、玄関に蜘蛛の巣が張ってしまうでしょう。で、自然と相場のような値段が付いてきます。またヤブは自然淘汰されていきます。ですから、無能な者が医者だと言っても長続きはしませんでした。 落語の中の医者;「死神」、「疝気の虫」、「強情灸」、「犬の目」、「転失気」、「夏の医者」、「金玉医者」、「義眼」などの名作が有ります。
やぶ医者のマクラに使われる小咄から。
■小便は出来ない;道具屋さんや古着屋さんでは買いそうなそぶりを見せて、最終的には買わないで帰る客を小便されたと言います。冷やかしだけで帰さないのが、小便は出来ないという業界用語。
■傷寒論(しょうかんろん);後漢末期から三国時代に張仲景が編纂した伝統中国医学の古典。内容は伝染性の病気に対する治療法が中心となっている。原本は失われたが後に残り、江戸時代の前半、最も流布した傷寒論は『注解傷寒論』系の傷寒論であった。日本の1660年ごろに作られた活字刊印の単経本傷寒論も『注解傷寒論』が底本であった。約半世紀後、同じ手法で『小刻本『傷寒論』』を香川修庵が1715年に抜粋・刊行し、大流行した。この小刻本『傷寒論』も、『注解傷寒論』系の書である。 江戸時代に制作されたと考えられている『康平本傷寒論』・『康治本傷寒論』も『注解傷寒論』の特徴を持ち、『注解傷寒論』系の偽書とされる。
■ちんころ;日本原産の愛玩犬「狆(ちん)」の別称で、ここから複数の意味で使われるようになった。
■ちん(狆);小型犬ながらも活発な狆は、体高と体長がほぼ一緒で、正方形に近い体型をしています。頭がよく、知的な表情をしており、どこか東洋的で高貴な雰囲気を漂わせています。目の端に白い被毛があり、少し驚いたような表情をしているのも特徴的です。優雅に軽やかな足取りで歩き、東洋的な気品を持ち合わせています。
■チンピ(陳皮);
蜜柑の皮を乾かした生薬。去痰・鎮咳・発汗・健胃剤として薬用、また薬味料とする。香辛料としては七味唐辛子に入れる。古いほうが良品とされる。
■カッコントウ(葛根湯);葛根を主材とし、麻黄・生姜(ショウキョウ)・大棗(タイソウ)・桂皮・芍薬・甘草を煎じつめた漢方薬。悪寒・口渇・身熱・悪風・肩凝り・下痢・嘔吐などに用いる。現在の売薬の多くの風邪薬は入っています。
■カンゾウ(甘草);マメ科の多年草。中国北部に自生。高さ約1mで全体粘質。羽状複葉。夏、淡紫色の蝶形花を穂状につける。根は赤褐色で甘根・甘草と呼び、特殊の甘味をもつ。生薬として鎮痛・鎮咳剤によく使われ、また、醤油などの甘味剤とされた。あまき。あまくさ。
■ハンゲ(半夏);カラスビシャクの漢名。サトイモ科の多年草。しばしば畑の雑草とみなされる。春、3小葉の複葉を伸ばす。夏、帯紫緑色の仏焔苞に包まれた花穂に、白色の雄花(上部)と雌花(下部)とをつける。塊茎は小球形で、悪阻(ツワリ)の妙薬という。
■ズボウ;オランダの薬と言っています。が、意味不明。
■サンキライ(山帰来・山奇量);ユリ科の蔓性低木。中国・インドなどに自生。サルトリイバラに似るが、とげがない。葉は長楕円形、三縦脈がある。白色の小花をつける。根は生薬で土茯苓(ドブクリヨウ)・山帰来といい梅毒の薬とする。
■ボーサンカリ(ホウ酸);ホウ酸のこと。ホウ酸にカリウムが結合したもので、性質的には似たものです。昆虫のような下等動物や微生物は、過剰なホウ酸塩を摂取すると致命的です。ホウ酸塩は目の洗浄や、化粧品の防腐剤に使われますが、これは微生物を殺しながら人体には悪影響のないホウ酸塩の性質を利用したものです。
■青酸カリ(せいさんかり);シアン化カリウム(シアンかカリウム)、青酸カリウム(せいさんカリウム)とも呼ばれ、毒物の代名詞的存在だが、工業的に重要な無機化合物である。毒物及び劇物指定令で「シアン化合物」として毒物に指定されている。
■薬取り(くすりとり);医者に病人の薬を受け取りに来る事。
「医者」三谷一馬画 先生のところに薬をもらいに来た人が並んでいます。部屋の奥には薬棚が並んでいます。
■日本橋瀬戸物町(にほんばし せとものちょう);日本橋本町二丁目と日本橋本町一丁目にまたがる道路(江戸橋通り)の両側の町。落語「百川」の舞台近く、福徳神社の南側の町。
■神田三河町(かんだ みかわちょう);神田三河町という町名はなく、単に三河町と呼ばれ、一丁目から四丁目までありました。現在の外堀通り西側の千代田区内神田一丁目から北に神田司町二丁目(一丁目の無い不思議な街)と南北に細長い街です。
JR神田駅西側の町。
■やぶに雀(やぶにスズメ);松に鶴とか、波に千鳥、等のように対になる組み合わせ。
2015年12月記 前の落語の舞台へ 落語のホームページへ戻る 次の落語の舞台へ |