落語「三軒長屋」の舞台を行く
■三軒長屋(さんげんながや);三軒長屋というのは、落語によく登場する貧乏裏長屋と異なり、表通りに面した表長屋の二階建てです。鳶頭や大工の棟梁や医者など、社会的信用があり、人の出入りが多い稼業の人間が借りたものでした。棟続きでも実際は一戸建ての借家に近く、それだけ家賃も高かった。裏長屋から表に出るというのは、このことです。落語「芝浜」の魚勝がそうです。
■姉御(あねご);姉(あね)さんとも言います。頭の連れ合い。
■頭(かしら);その組のリーダー。頭(あたま)に立つ者。
■鳶(とび);空を飛ぶ猛禽類の鳥ではなく、大工仕事で足場作業や高所作業などをする職人。江戸時代は火消しを兼務していたし、出入りの店(おたな)でトラブルがあれば、真っ先に駆けつけます。
■御神酒徳利(おみきどっくり);神棚に上げる御神酒を入れる徳利。御神酒と書いたら『ごしんしゅ』と読んではいけません、かならず『おみき』と読んでください。ある結婚式場で神官が「ごしんしゅ」と何度も言っていましたが、彼はアルバイトではないのか。
■家質(かじち);家を抵当に金を貸し質権を設定した物件。返済約束時までに入金がないと流れて質屋の物となります。
■店立て(たなだて);借家を追い出されて明け渡すこと。江戸時代は貸し主側の権利が強く、家主(大家)が出て行けというと反論のしようが無く、勘弁してもらうか条件を吞むかしないので、出たら路頭に迷ってしまいます。
■花会(はなかい);博徒・職人などが、金銭を集めることを目的に催す催事。(ここでは)博打会。
■こもかぶり;酒は木の樽に収められて出荷されます。樽の廻りにコモで巻いて輸送の安全を図りましたが、後年そのコモに商標をすり込んで中身が分かるようにしました。一流の商標が付いていると、それだけで奮発したのが分かります。
■もうひとつの三軒長屋の噺;「三軒続きでの長屋で、左側に独り者、真ん中に夫婦者、右側に夫婦と赤ん坊。 真ん中の夫婦は、所帯を持ってもう七、八年になるのに、まだ子供ができない。 「てめえの畑が悪い」 「いや、おまえさんのタネが悪い」 と、口論の末、 隣の子持ちの夫婦は製造法に秘密があるのだろうと、こっそり奥儀を盗もうと見学。
2015年2月記 前の落語の舞台へ 落語のホームページへ戻る 次の落語の舞台へ |