落語「上燗屋」の舞台を行く 桂枝雀の噺、「上燗屋」(じょうかんや)より
■二代目 桂枝雀(かつらしじゃく);(本名:前田 達(まえだ とおる)、1939年(昭和14年)8月13日 - 1999年(平成11年)4月19日)は、兵庫県神戸市生まれの落語家。三代目桂米朝に弟子入りして基本を磨き、その後二代目桂枝雀を襲名して頭角を現す。古典落語を踏襲しながらも、超人的努力と空前絶後の天才的センスにより、客を大爆笑させる独特のスタイルを開拓する。出囃子は『昼まま』。実の弟はマジシャンの松旭斎たけし。長男は桂りょうば。
師匠米朝と並び、上方落語界を代表する人気噺家となったが、1999年3月に自殺を図り、意識が回復することなく4月19日に心不全のため死去した。59歳没。他、同世代の噺家の中では『東の志ん朝、西の枝雀』とも称されている。
■噺の続き;5円でつりと言うが上燗屋では釣り銭が無いので、向かいの道具屋に行って、産毛屋の毛抜きを見せてもらい、仕込み杖を買い求め、釣り銭で上燗屋に支払いを済ませる。家に帰ってきて仕込み杖を試したいので、雨戸を少し開けておくと。そこに、こそ泥が忍び込んで部屋をのぞき込んだときに仕込み杖で切られてしまう。切られた首を下げて火事の町を走って行く。
■日本酒(にほんしゅ);清酒。酒税法の定義では米、米こうじ、水を原料として発酵させ、こしたものなどで、アルコール分が22度未満の酒類を指す。一般的には日本酒と呼ばれるが、国税庁は2015年12月、地域ブランドを保護する地理的表示制度で日本酒を指定し、日本酒と表示できるのは、国産の米を原料に、国内で製造された清酒に限られるようになった。例えば、アメリカ産の米をアメリカで醸造された清酒は日本酒とは表示できない。同じように外国産米を日本で酒にしても日本酒とは表示できない。逆に日本産の日本酒が外国に行っても日本酒です。
■上燗(じょうかん);酒の燗の温度の種類の一つ。また、お燗をする人をお燗番と言います。
●冷やの表現と温度
■うめる;湯に水を混ぜてぬるくする。差し水をする。この噺では熱燗に冷めた酒を足すこと。勘定がややっこしくなります。
■カラまむし;おからまぶし。酢と砂糖で味付けしたおからをからめて調理した料理。カラは豆腐のおからのことで、カラジルといえば、おからで作った汁。アサリのむき身とネギの五分切りなどを加える。決して蛇のマムシの料理とは違います。
■鰯のカラまむし;イワシを酢でしめ、おからを甘酢で炒って冷まし和えた料理。「オカラを酢で味付けしたもんで、こ~イワシをまむしてございます」噺から。上方では多く食べられますが、関東ではあまり食卓には上りません。
■紅生姜(べにしょうが);ショウガの塊根を梅酢に漬けた漬物の一種。生姜の日持ちをよくするために古くから酢漬けが行われていたが、関東では主に甘酢が使われてガリとなり、関西では主に梅酢が使われて紅しょうがとなった。
■五寸(5すん);尺貫法における長さの単位で、日本では1寸=約 30.303 mmです。尺の10分の1と定義される。5寸=約15cm。
■付け焼き;
①料理で、材料をしょうゆなどに漬け込んでから焼くこと。また、その料理。魚介類・肉のほか、竹の子・高野豆腐・はんぺんなども用いる。◇「漬け焼き」とも書く。
■身欠き鰊(みがきにしん);頭・尾・内臓を取り去り二つに裂いて干したニシン。欠き割り。最近は噺のような堅~いニシンは少なく、8分乾燥とか、生に近いものもあります。右写真。
■鷹の爪(たかのつめ)=トウガラシ。唐辛子はナス科のトウガラシ属で、その実や実から作られる香辛料の事を言います。唐辛子の由来は、唐から伝わった辛子という意味で、唐辛子と呼ばれるようになりました。日本に伝わったのは1542年で、ポルトガルから来た宣教師により伝えられたと言われています。鷹の爪は辛みが強く、日本産の唐辛子の代表品種と言われています。唐辛子の鷹の爪は、形状が鷹の爪に似ていることから、このように呼ばれるようになったとされます。右写真。
■本家産毛屋(うぶけや);毛抜きは古くから、金沢市や越後高田(上越市)、江戸など、工芸品として伝わった。現在「産毛屋(うぶけや)」を名乗る店が越後高田、東京浅草人形町にある。東京は東京都中央区日本橋人形町3-9-2にあります。https://www.ubukeya.com/about.html
左、現在のうぶけ屋。 右、江戸時代のうぶけ屋。産毛屋のホームページより
■仕込み杖;様々な理由により刀剣を剥き出しで携行できない場合に護身用や暗殺用途に用いるために製作される武具であり、「仕込」と呼ばれるだけあり、外見からは刀と分からないように偽装されている。その多くは扇子や煙管、杖などの日用品に偽装してある場合が多い。特に、日用品に偽装したものは、大っぴらに武器を持つ事ができないが武装の必要性のある町人が護身用として持っていたようである。その中でも時代劇『座頭市』の主人公・市の得物である仕込み杖は有名である。欧州でも中世頃からソードスティック(Swordstick.剣杖(CaneSwordケインソード(剣鞭)とも)と呼ばれる同じ用途のものが存在する。
暗殺用具として用いられたものの他に、近代になって市民社会が発達し、たとえ貴族であっても刀剣を公然と携行することができなくなると、護身用具として杖や傘などの「通常携行していても違和感のない日用品」に偽装、もしくは刀身を内蔵した刀剣類が所持されるようになった(これは後に拳銃の発達によって廃れてゆく)。日本では、明治時代に廃刀令が発布されると、士族階級に刀を仕込んだ杖を所持、携行することが流行した。
■おばんざい;この噺に出てくる上燗屋は、料理をおばんざい形式で出していたのでしょう。
2018年11月記 前の落語の舞台へ 落語のホームページへ戻る 次の落語の舞台へ |