落語「念仏尺」の舞台を行く 桂米朝の噺、「天狗さし」(てんぐさし)、 別名「念仏尺」より
■念仏尺(ざし)について、『米朝ばなし』では大谷廟あたりの朝夕念仏が聞こえる竹薮で育った竹で作った物差しと言っていますが、『米朝全集』の解説によると、「近江の伊吹山から念仏塔婆が掘り出され、それに精確な尺度が刻んであったので、これを模して念仏尺と名づけた」とあり、京の六条で作る念仏尺が最も精巧だったといわれたそうです。
■「てんすき屋」;「天狗のすきやき屋」だという。鼻の高い大天狗の手下のカラス天狗を捕まえてきてすきやきにすれば珍しがって流行るだろうという。貸店舗には手金を打ったという堺筋、八幡筋の西へ入った所は、なんばのミナミの宗右衛門町の北側あたり。こんな繁華街に店を出そうとする男はけっこう金を持っているようです。それとも借金でもしてつくった金なのでしょうか。店の概要も決まらず手付けを打つなんて、度胸が良いというか、一つ抜けているかです。
■天狗(てんぐ);日本の民間信仰において伝承される神や妖怪ともいわれる伝説上の生き物。一般的に山伏の服装で赤ら顔で鼻が高く、翼があり空中を飛翔するとされる。神、流星、妖怪、魔物か、鳥、犬、人間か。とにかく不思議な伝説上の生き物です。
高尾山 - 日本三大天狗の一つ(天狗伝説がある。ふもとのJR東日本高尾駅には巨大天狗面が装飾されている)。京王線終点の高尾山口駅にも天狗のお面は有ります。
高尾山本堂前の天狗。 上、小天狗(カラス天狗)。下、大天狗。
鞍馬寺 - 同上(ここの裏山で牛若丸(源義経)に剣を教えた人物が、天狗面をつけて素性を隠していたという伝承から。源氏の落人の一人と見られる)。
■大天狗とカラス天狗;天狗が成立した背景には複数の流れがあるため、その種類や姿もさまざまである。一般的な姿は修験者の様相で、その顔は赤く、鼻が高い。翼があり空中を飛翔するとされる。このうち、鼻の高いのを「鼻高天狗」、鼻先が尖ったのは「烏天狗」あるいは「木の葉天狗」という。
鳥のように自由に空を飛び回る天狗が住んでいたり、腰掛けたりすると言われている天狗松(あるいは杉)の伝承は日本各地にあり、山伏の山岳信仰と天狗の相関関係を示す好例である。樹木は神霊の依り代とされ、天狗が山の神とも信じられていたことから、天狗が樹木に棲むと信じられたと考えられる。こうした木の周囲では、天狗の羽音が聞こえたり、風が唸ったりするという。風が音をたてて唸るのは、天狗の声だと考えられた。愛知県宝飯郡にある大松の幹には天狗の巣と呼ばれる大きな洞穴があり、実際に天狗を見た人もいると云う。また埼玉県児玉郡では、天狗の松を伐ろうとした人が、枝から落ちてひどい怪我を負ったが、これは天狗に蹴落とされたのだという話である。天狗の木と呼ばれる樹木は枝の広がった大木や、二枝に岐れまた合わさって窓形になったもの、枝がコブの形をしたものなど、著しく異形の木が多い。
■堺筋の八幡筋(さかいすじの はちまんすじ);堺筋、大阪市北区の天神橋1交差点から、大阪市中心部の船場・島之内を縦断して、西成区の天下茶屋東1交差点に至る、全長約6.1kmの南北幹線道路。大阪府道102号恵美須南森町線の大部分を占め、ほぼ全線の地下に地下鉄堺筋線が通っている。かつては三越や松坂屋、髙島屋などの百貨店が立ち並び、大阪一の目抜き通りであったが、1920年代から1930年代にかけて大阪市が御堂筋を新たなメインストリートとして整備・拡張を行い、さらに地下に日本初の公営地下鉄である御堂筋線の建設を行ったことで大阪の中心は堺筋から御堂筋へと移っていった。
八幡筋、道頓堀から北へ東西に走る道路。道頓堀の北側を走るのが宗右衛門町通り、その北側に並行して走るのが三津寺前通り、その北側の道を八幡前通りと言います。大阪の繁華街の一角で、家賃は高いでしょうね。
■手金(てきん);「手付け金」に同じ。「手金を打つ」
■トリモチ(鳥黐);鳥や昆虫を捕まえるのに使うゴム状の粘着性の物質。鳥がとまる木の枝などに塗っておいて脚がくっついて飛べなくなったところを捕まえたり、黐竿(もちざお)と呼ばれる長い竿の先に塗りつけて獲物を直接くっつけたりする。古くから洋の東西を問わず植物の樹皮や果実などを原料に作られてきた。近年では化学合成によって作られたものがねずみ捕り用などとして販売されている。
上、江戸時代の長いトリモチ竿を持った鳥刺し。
■奥の院(おくのいん);寺院または神社の奥にあって、ゆかりの深い秘仏もしくは祖師開山を安置する場所、あるいは堂舎のこと。寺院などのなかでもっとも神聖な区域とされ、本堂から離れた後方の山上や岩窟(がんくつ)内に設けられて、有事の際に備えかつ参拝者の信仰を深くさせる。京都の牛尾(うしのお)山厳法寺(ごんぽうじ)を清水寺(きよみずでら)の奥の院、和歌山県高野山(こうやさん)の弘法大師廟(びょう)を高野山の奥の院と称する。ほかに當麻寺(たいまでら)、唐招提寺(とうしょうだいじ)の奥の院、長野県の戸隠(とがくし)神社の奥社が有名である。
■竹尺(たけじゃく);竹を使う理由、昔から、竹は温度や湿度によって変化しにくい素材なんです。宇宙に行っても変わらない、なんて言われた時期もありました。
2021年12月記 前の落語の舞台へ 落語のホームページへ戻る 次の落語の舞台へ |