落語「持参金」の舞台を行く 桂米朝の噺、「持参金」(じさんきん)
私は東京で生まれて、東京で育って、いまだ東京から出て生活をした事がありません。落語の世界では上方言葉を聞いても理解も出来ますし違和感はありません。しかし今回の米朝さんの上方弁をそのまま文字化するにあたって、聞き言葉と違って書き言葉には大変な苦労をしました。全部、東京言葉で書き改めようかと何度も思いましたが、書き始めた事だし、米朝さんのニアンスを生かす意味もあって、最後まで上方弁にしましたが、東京言葉が混じっているかも知れません。どこがと言われても困るのですが、そのところは笑ってお許し下さい。
■持参金(じさんきん);嫁または婿などが結婚する時に、実家から持参する金。
天保12年69歳で他界するまで子供54人もうけて、多産の大記録を立てた十一代将軍家斉がいます。ただ、成人したのは37人ですが、成年に達したときには養子に出さなくてはなりません。養子に出すためには現金と加増という持参金を付けて、各大名に押しつけたのです。年齢や美貌は関係無しに大名に嫁がせたので、各大名は戦々恐々となり禄が増えると喜ぶ藩も有りましたが、断る理由を探す藩までいろいろ出てきます。美人が来れば良いのですが、盲人や病弱の者も居て大変ですが、威光と持参金で全員押しつけてしまったのです。
■でぼちん;ひたい。お鍋さんの器量を・・・、背がスラァ~と・・・低い。で、色がクッキリと黒い。鼻はどっちかと言うと内へ遠慮してる方やけど、でぼちんは出てる方やナ。で、両方のほっぺたがツーンと出てて、あごが出てるさかいに、まぁ、こけても鼻は打たんわなぁ。両方の眉毛の長さが違うところに愛敬があるなぁ。目は小さいけど、口はでかいで。三味線とか針仕事とか、女一通りのことは何をさしても半人前やけど飯は三人前食うで。で、人との挨拶とか、折り目節目の挨拶とかはあんまりやらんけど、いらんことは人一倍しゃべりよるでぇ。仕事は遅いけど、つまみ食いは速いでぇ・・・。その上にキズが有るという。いったいどんな女なんだ。でも、優しいのが取り柄です。
■20円;現在の金の価値とは違います。この噺の頃は100万円ぐらいの価値はあったんでしょうね(たぶん)。
■三三九度(3・3・9ど);祝言などの際の献杯の礼。三つ組の杯で3度ずつ3回酒杯を献酬すること。三三九献。
■宿下がり(やどさがり);奉公人が暇を貰って親元または請人(ウケニン、口入れ屋、職業紹介所)の家に帰ること。早い話が、クビになる事。
■別家前(べっけまえ);商家への年季奉公を無事に勤め終えて、主家の屋号を称することを許され、資金をもらって独立すること。また、その商家を別家と言った。独立前の微妙な時期ですから、しくじったら今までの苦労が水の泡になってしまいますので、番頭さんは必死。
■家主(やぬし。いえぬし);長屋の管理を任されている管理人。そのよび名から長屋の持ち主のように思われがちですが、じつは土地・家屋の所有者である地主から、長屋の管理を任されている使用人で、家守(やもり)、大家(おおや)、差配(さはい)ともよばれていました。現代で言う管理人です。豊かな地主は多くの長屋を持ち、それぞれに大家を置いた。
2015年7月記 前の落語の舞台へ 落語のホームページへ戻る 次の落語の舞台へ |