落語「霜夜狸」の舞台を行く 宇野 信夫原作 五代目古今亭今輔の噺芸、「霜夜狸」(しもよだぬき)より
■原作;劇作家でエッセイストでもあり、落語にも大変精通していた宇野 信夫(うの のぶお、1904年7月7日 - 1991年10月28日)原作の新作落語です。話中では、風の音、薪をくべる音、薪のはぜる音、笛の音、鐘の音などがふんだんにちりばめられ、物語風に演じられます。昭和の三大名人・三遊亭円生師が演じた音が有名ですが、私は、あの『おばあさんの今輔』の五代目・古今亭今輔師の音から書き起こしています。寒い月夜の晩の、狸とお爺さんのやりとりは、ほのぼのとしていながら、亡くなった伜の事など、ちょっとしんみりさせる部分もあり、聞き終わった後で、民話のような、良い噺だったなぁと思えます。
宇野信夫;埼玉県本庄市生まれ、熊谷市育ち、その後浅草で暮らす。本名信男。埼玉県立熊谷中学校(現:埼玉県立熊谷高等学校)、慶應義塾大学文学部国語国文学科卒業。
父は埼玉県熊谷市で紺屋・染物屋を営んでいて、浅草に東京出張所と貸家(蕎麦屋と道具屋)を持っていた。中学を出た後は、その出張所から大学に通い、卒業後もそこで劇作にいそしみ、1944年まで住み続けた。その時代に、まだ売れていなかった、のちの古今亭志ん生ら貧乏な落語家たちが出入りして、彼らと交際した。六代目三遊亭圓生とも交友が深かった。
宇野信夫創作落語では、「江戸の夢」があります。
■山番小屋(やまばんごや);山の番人。山林を火災や盗難から守る番人が住む山小屋。
■庄屋様(しょうやさま);庄屋(しょうや)・名主(なぬし)・肝煎(きもいり)は、江戸時代の村役人である地方三役の一つ、郡代・代官のもとで村政を担当した村の首長。身分は百姓。庄屋は主に西日本での呼称で、東日本では名主、東北・北陸地方では肝煎と呼んだ。庄屋は荘(庄)園の屋敷、名主は中世の名主(みょうしゅ)に由来する言葉。
城下町などの町にも町名主(まちなぬし)がおり、町奉行、また町年寄(まちどしより)のもとで町政を担当した。身分は町人。町名主の職名は地方・城下町によってさまざまである。
■山田の蛙(かわず)も鳴き始めました;山にある田、山間の田、で鳴く蛙。冬眠から醒めた蛙が鳴き始める春先の気候。
■お山の花;花と言えば桜です。山一面を覆った桜が、木枯らしや冬が過ぎ去った春真っ盛りを表しています。
■木枯らし(こがらし);秋から初冬にかけて吹く、強く冷たい風。木を枯らすほどの風という語源からきている。
■根切り(ねぎり);根だやしにすること。根絶。持病が根絶して治ること。
■小判の一枚;1両。現代の貨幣価値で約8~10万円。
江戸東京博物館蔵。大きさも金含有比率もまちまちで、時代が下がるほど金の絶対量が減っていきます。
■けんちん汁;大根・牛蒡(ゴボウ)・人参・椎茸(シイタケ)などを繊切(センギリ)にして油で炒り、くずした豆腐を加え湯葉などで巻き、油で揚げたものを、実としたすまし汁。けんちん。
■春になると眠くなります;中国でも同じで、孟浩然の詩『春暁』に「春眠暁を覚えず、処処啼鳥を聞く、夜来風雨の音、花落つること知る多少」、春の夜は短く、また気候もよいので、つい寝過ごしてしまうという意味。
■甚平(じんべい);(「陣羽折」また「陣兵羽織」の転という)
男子用の袖無し羽織の名。もと関西地方に起り、木綿製綿入れの防寒着で、丈は膝を隠すくらいとし、前の打合せを付紐で結び留める。今、麻・木綿製で筒袖をつけた夏の家庭着にいう。じんべ。右写真。
■菩提(ぼだい);仏の悟り。煩悩を断じ、真理を明らかに知って得られる境地。ここでは、死後の冥福。
■佐渡(さど);新潟県に属し、面積857平方キロメートルの日本海最大の島。
上写真:左から江戸時代の採掘、坑道の補強、水の掻い出し。 ゴールデン佐渡のパンフレットより
■ふかし;小判を作る。偽造すると言うより、1両分の砂金を小判一枚と交換して、実質一両作る。
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