落語「壺」の舞台を行く 二代目三遊亭円歌の噺、「壺」(つぼ)より、別名「壺の幽霊」
■二代目 三遊亭 円歌(さんゆうてい えんか);(1890年4月28日
- 1964年8月25日)
■初代林家正楽(一柳金次郎)、この噺「壷」の作者。
■壺(つぼ);主として、食糧の貯蔵や水や酒などの飲料の運搬という用途に用いられる器である。焼き物が多いが、ステンレス鋼製(医療用などに)やプラスチック製もある。人間が1人で運搬可能な大きさの器のことを壺と呼ぶ。それより大きいのを瓶(かめ)甕(かめ)と言います。 口が細くつぼまり胴のまるくふくらんだ形の容器。また、膳部に用いる椀形の小さく深いうつわ。梅干しを漬ける壺。茶壺。ぬか漬けの壺。インク壺。
上、壺。左のような口が開いた壺に紙で蓋をして隠したのでしょう。 右のように重い蓋だったらネズミの被害に遇わなかったでしょう。常滑焼の、梅干しや塩を入れる壺。首も吊らずに済んだのに・・・。
■貸家(かしや);家賃を取って貸している家のことで、貸す側、すなわち所有者(大家)から見た言い方です。入居者側から見ると借家と言います。
■大家(おおや);大屋とも書き、家守(やもり)、家主(やぬし)ともよばれた。江戸の貸地、貸家の管理人で、地主、家持(いえもち)にかわって地代、店賃(たなちん)などを取り立てた代理人、差配(さはい)人のこと。彼らの多くは、地主のもっている長屋の別棟か、地主所有の家屋を与えられ、地代、店賃の徴収のほか、五人組の構成員として公用や町用を行った。また「たなこ(店子)と言えば子も同然」といわれたように、借家人(店子)には、子に対する親のような責任と権利をもっていた。
■権利(けんり);権利金。借地契約・借家契約の際に、慣行として、賃借人の側から地主・家主に支払われる賃料・敷金以外の金銭。契約が終了しても返還されない。礼金、みやげ金ともいわれる。権利金は、借地、借家の需給関係のアンバランスを背景にして生まれてきた。限られた供給に対して、需要が多い場合、賃貸人側は、貸す権利の設定そのものに対価を要求し、借りる側も、借りる権利の設定に多少対価を払っても借りたいということになる。
■家賃(やちん);賃貸物件の使用者(入居者)から貸主に支払われる賃貸料金のこと。賃貸マンションやアパート等住居系物件の賃料を「家賃」と呼ぶ。通常、1ヶ月ごとの金額で設定・表示される。住居系の家賃に対しては、消費税は非課税となる。一方、事務所、店舗、工場、倉庫、駐車場など住居系以外の賃料は課税対象となる。通常、賃貸借契約後、入居当月の家賃(入居日から月末までの日割り家賃)と次月の家賃を払うことになる。これを前家賃制という。
■敷金(しききん);不動産の賃貸借の際、賃料その他賃貸借契約上の債務を担保する目的で賃借人が賃貸人に交付する停止条件付返還債務を伴う金銭である。
賃貸借契約が終了する場合には、賃借人に債務不履行がなければ明け渡し時に全額返還され、法律では個人に対する敷金は家賃の1ヶ月分以上請求してはならず、本来預り金的性格を有する前払金である。ただし、近畿地方以西の西日本では権利金(礼金)の性質を持ち、一部(賃料の1ヶ月分)が返還されないことが多い。これを敷引と呼ぶ。敷引等は「権利金」「礼金」と同様の「賃料の前払的性格」を有する。
■百物語(ひゃくものがたり);日本の伝統的な怪談会のスタイルのひとつ。怪談を100話語り終えると、本物の”物の怪”が現れるとされる。起源は不明だが、主君に近侍して話し相手を務めた中世の御伽衆に由来するとも、武家の肝試しに始まったとも言われている。こうした怪談を集めた本も多く刊行されており、延宝5年(1677)の『諸国百物語』、宝永3年(1706)の『御伽百物語』、享保17年(1732)の『太平百物語』などが知られている。怪談文学と称され、室町時代に始まり、江戸時代に一種のブームになったという。
以下の5枚は葛飾北斎の真筆と認定されている。タイトルから100枚を作る予定と見られるが、この5枚以外は確認されていない。画工は職人で、依頼された絵を描くのであって、通常自分の描きたい絵を創ることは、版元から出版されないので描くことはない。「富嶽三十六景」を描いた北斎から見ると信じられないだろうが、ウエットのとんだ北斎である。
上左より、「百物語ーさらやしき」
おなじみ歌舞伎で知られた番町皿屋敷、有名なお菊さんの幽霊です。蛇をイメージしたのだろう蛇の胴体に皿が巻き付いている。皿は蛇の模様のようだ。お菊さんは若い美人が演じるが、北斎は垂れ目のおばさんにしてしまった。反逆の北斎、面目躍如である。東京国立博物館蔵
「百物語ー笑いはんにゃ」
国籍不明の般若である、角と牙を持ち幽霊と言うより妖怪か、絵の感じでは中国的です。水滸伝的な匂いがする。東京国立博物館蔵
「百物語ーお岩さん」
歌舞伎の怪談物では一番知られている「四谷怪談」のお岩さん。ほとんどの作者が、お岩さんを目が潰れ、腫れ上がった顔を描くのに北斎は目を大きく開き後頭部が提灯というユーモラスな絵にしている。東京国立博物館蔵
同じく左より、「百物語ーこはだ小平次」
江戸の歌舞伎役者である木幡小平次は、売れない役者であった、やっと貰った役が幽霊。しかし、旅先で妻の密通相手に殺されてしまう。絵は妻と密通相手の所に蚊帳から顔を出したところ。何となくか弱い子供のような幽霊である。山東京伝作「復習奇談安積沼(あさかぬま)」 東京国立博物館蔵。 落語「生きている小平次」に語られる。
「百物語ーしうねん」
不思議な絵である。位牌の戒名は北斎の機知か、戒名(ももじい)の上の梵字は女の横顔になっている。また、線香台の卍は日蓮宗の印である。三方に載っているのは何か、何を意味しているのか。東京国立博物館蔵
■屑鉄拾い(くずてつひろい);路上に落ちている屑鉄を拾い集め、または、川などに落ちている屑鉄を拾い集め(ガタロ=落語「代書屋」)古鉄屋さんに買い取って貰い、生計を立てること。私の子供時分には、折れ釘やアキ缶などが結構落ちていて、拾い集めると子供の小遣いにはほどよい収入になった。最近はアルミ缶を専門に集めている大人達がいます。小遣い銭以上にはなるのでしょう。
■縁の下(えんのした);日本家屋で、1階畳の床と地面との空間。台所には上げ板があって、その下には地面までの空間を利用して、ぬか漬けの樽や酒瓶、炭等を入れておいた。居室の床下は入るところが有りませんので、隠した本人がいなくなると、そのままで埋没したりして、時代が変わって掘り出されることも有ります。
■住めば都(すめばみやこ);住みなれれば、どんなに貧しく不便な環境であってもそれなりに住みよく思われるものだ。
■幽太(ゆうた);幽霊のことを、見下した呼びかけ語としています。私の友人に、文字は違いますが同じ名前の人がいます。
■青い火(あおいひ);幽霊が出るとき、または、幽霊と共に出る陰火。芝居などではアルコールをワタにしませて糸の先に吊し火を点けて、その状態をみせます。アルコールの代わりに樟脳玉を使うこともあります。
■バカは死ななきゃ直らない;愚かであるという性質は治そうとしても治しようがない、バカを治療する手立てはない、馬鹿者であることは手の施しようがない、などの意味の表現。
■べらぼう;1 程度がひどいこと。はなはだしいこと。また、そのさま。「今日はべらぼうに寒い」「べらぼうな値上がり」。
川柳川柳師匠と五街道雲助師匠の会話から「べらぼうめッ」。雲助師のホームページより
■肩身の狭い(かたみがせまい);世間に対して面目が立たない。世間をはばかる気持である。大家の墓に入れられているからって、”骨身が狭い”ではない。
■法事(ほうじ);死者の追善供養のため、四十九日まで7日ごとに行う仏事や、年忌に営む仏事。
■赤い羽根や緑の羽根(あかいはねや みどりのはね);募金活動のため、募金した人に渡す羽根。
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