落語「始末の極意」の舞台を行く 桂米朝の噺、「始末の極意」(しまつのごくい)より
■原典;「落としばなし」寛永3年刊。梅亭金鵞・五返舎半九作・橋蝶楼貞房画より、吝(しわ)いん坊になる伝。右図。
「銭使いが荒いから、直す方法を教えるから、榎の枝につかまれ。片手を離せ」、「離した」、「反対の手を離せるか」、「この手を放したら、落ちて死にます。早く教えてください」、「今度から銭金を持ったら、その心もちでいらっしゃい」。
■丁稚(でっち);(デシ(弟子)の転。一説に、双六の重一(デツチ)からともいう) 職人または商人の家に年季奉公をする年少者。雑役に従事した。江戸では小僧と言った。
■始末の極意(しまつのごくい);浪費せず、つつましいこと。倹約。その極意だという。その極意とは、物事の核心。特に、学問や芸事の奥義。おくのて。で、ケチの極意では「そんな事したら、ドツかれまっせ」。
■オキ(燠・熾);赤くおこった炭火。おきび。薪(木造家屋)が燃えて炭のようになったもの。
■奉公人(ほうこうにん);主家に仕える従者。他家に召し使われる人。やといにん。従業員。
■大店(おおだな);大規模な商家。大商店。
■黒暗地獄(こうあんじごく);阿鼻に属する地獄のひとつ。黒山間の暗い所で、灯明を盗んだり父母・師長の物を盗んだりする者などを呵責(カシヤク)する。
■爪に火を灯して;蝋燭(ロウソク)のかわりに爪に火をともすほど、過度に倹約する。
■柾目の桐下駄(まさめのきりげた);幹の中心を通って縦断した面。透心縦断面。また、その材木。縦にまっすぐに通った木目(モクメ)のあるもの。まさ。柾目で、出来た桐の下駄=軽くて目が通っているので上品な作りになっている。また噺では、この表面に畳表が張ってあるので、雪駄のように粋な感じになり冷たさが直に足に来ない。
右図:畳表は付いていないが、柾目の通った桐下駄。
■中の天神さん(なかのてんじんさん);梅干しの種の中にある実。
昔は梅の種がすべて危険だと思われていたため、子どもにも危険が伝わるように「梅干の種の中には天神様が寝ている」と表現したのがはじまりだと言われています。
まだ熟していない青梅の種の中にはアミグダリンという成分が含まれており、胃腸で分解されると少量ですが猛毒の青酸を出してしまうからです。しかし塩漬けすることによりアミグダリンは消失するので、梅干の種は食べても人体に影響はありません。天神様といえば菅原道真が梅を愛していたことに由来します。梅の種の中に天神様が宿るという伝えをすんなり受け入れられたようです。その結果、天神様がいらっしゃる梅の種を粗末に扱ってはいけないと考えられるようになりました。
■食い合わせ(くいあわせ);2種以上のものを同時に食べると中毒を起すと言われる組み合わせ。
★うなぎ【鰻】 + うめぼし【梅干】、=鰻の脂と梅干しの強い酸味が刺激し合い、消化不良を起こすという説が有力。実際には、酸味が脂の消化を助けるため、味覚も含めて相性の良い食材である。
★だいこん【大根】 + にんじん、=人参に含まれるアスコルビナーゼには、大根のビタミンCを壊す作用がある。正月の”なます”は、大根・人参・干し柿で作るが酢の作用でビタミンCは壊れない。
★トマト【蕃茄】 + きゅうり【胡瓜】、=きゅうりに含まれるアスコルビナーゼにはトマトのビタミンCを壊す作用がある。また、共に体を冷やす作用がある。
★なまたまご【生卵】 + ところてん【心太】、=共に消化に時間がかかるため、胃腸に負担がかかる。
★かに【蟹】 + かき【柿】、
★わかめ【若布】 + ねぎ【葱】、
★てんぷら【天麩羅】 + すいか【西瓜】、=油の多い天麩羅と、水分の多い西瓜を一緒に食べると、胃液が薄まり、消化不良を起こすことがある。
★うなぎ【鰻】 + すいか【西瓜】、=上記と同じ。
★なすのつけもの【茄子の漬物】 + そば【蕎麦】、
★さけ【酒】 + からし【辛子、芥子】、=酒も辛子などの辛いものは血行を促すため、かゆみが出てしまう可能性があります。蕁麻疹(じんましん)や湿疹が出やすい人は、要注意。
★まつたけ【松茸】 + あさり【浅蜊】
★かきごおり【カキ氷】 + てんぷら【天麩羅】
■おうこ;両側に物を掛けて荷(ニナ)う棒。上方で使われる語で、関東では
右図:「おうこ」。大阪ことば事典より
■つまみ菜(つまみな);もともとは大根、しろ菜、かぶ、小松菜、漬け菜などの若苗を生長させるため摘み取ったもの。現在では漬菜の一種である「雪白体菜(せっぱくたいさい)」という専用種の若苗を指します。
■時分時(じぶんどき);食事の時間帯。
■ぶぶ;元来は、湯または茶のことですが、ぶぶ漬けの略で、茶漬け、オブ漬けの事。
■住吉さん(すみよしさん);住吉神社。大阪市住吉区住吉にある元官幣大社。住吉神(スミノエノカミ)の三神と神功皇后とを祀る。二十二社の一。摂津国一の宮。今は住吉大社と称。同名の神社は、下関市一の宮住吉(長門国一の宮)や福岡市博多区住吉(筑前国一の宮)など各地にある。
上図:大阪住吉大社。
■(人差し指と親指の輪は)離さんのが極意じゃ;
2016年4月記 前の落語の舞台へ 落語のホームページへ戻る 次の落語の舞台へ |