落語「子猫」の舞台を行く 桂米朝の噺、「子猫」(こねこ)より
■子猫;題名と落語の内容がこれほどかけ離れた噺も珍しいでしょう。子猫は会話の中では登場せず、血だらけの三味線革(?)になって出てくるだけです。悲惨な可哀想な子猫たちで、おなべに同情するのか、子猫に同情したら良いのか迷うところです。
■人置屋(ひとおきや);雇い人や遊女の周旋屋。私設安定所。奉公人の就職が決まるまで一時の宿(人宿屋)を提供したり、身請人や仮親などの世話をもした。口入れ屋。桂庵(ケイアン)。
■御寮人 (ごりょん)さん;近世、中流の人の娘または年若い妻への尊敬語。ごりょん。(ゴリョウニンの訛)
他人の妻または娘の尊敬語。
■女衆(おなごし);女中。下女・はしため。雇われた順あるいは年齢順に、松竹梅からとってお松どん、お竹どん、お梅どんと呼んだ。長じるとお松っつぁん、お竹はん、お梅はんとなる。決して呼び捨てにはしなかった。
■女衆のことならお店でかもてもらわいでも結構;口入れ屋から女性の雇い人を入れるときは、御寮人さんが責任を持って面接をし、店で働かせるか奥(家事)で使うか決め、給金も決める。男連中が口出しすることは一切許されない。
■船場(せんば);東西の横堀川、北は土佐堀川、南を長堀川に囲まれた地域を船場と呼ぶ。大阪の商業の中心地。
■お家さん;その家の内に住む主婦のことを指していう。主として、当人と向かい合って話す時などに用いる。
■丁稚(でっち);職人または商人の家に年季奉公をする年少者。雑役に従事した。江戸では小僧と言った。
左から江戸三井越後屋の小僧。中、右、番頭(旦那)さんのお供で、荷物を持って同行。熈代照覧より。
■ボテ屋;紙を貼って漆または渋を塗った竹の小葛籠。張り子。張りぼての略。
■茶人やなぁ、侘び寂びの世界やねぇ;地獄の選択とか究極の選択とか言って、どちらにも大きな欠点があって選びずらいとこです。別嬪さんを選ぶか働き者を選ぶか。
■手水場(ちょうずば);厠(カワヤ)の傍の手を洗う所。手洗場。便所。はばかり。かわや。
■雪隠場(せんちば);せっちんば。便所。かわや。せんち。雪竇禅師(セツチヨウゼンジ)が浙江の雪竇山霊隠寺で厠の掃除をつかさどった故事からという。
■我精(がせぇ);骨身を惜しまず働くこと。気が利いてはきはきしていること。元気のよいさま。また、勝気なさま。
■血のり;まだ乾かない粘りけのある血。血糊(ちのり)。のりのようにねばねばする血。
■暇を出す(ひまをだす);奉公人などを解雇する。また、妻を離縁する。
■葛篭(つづら);藤づるあるいは竹,ヒノキの薄板などを編んで作った籠,またこれに紙をはり渋,漆などを塗った箱。形は長方体が多く,ふたをかぶせて衣類などを入れた。衣籠,葛羅などとも書く。〈つづら〉というのは、はじめもっぱらツヅラフジのつるを用いて作ったからで、縦を丸づる,横を割づるで編み,四方のすみと縁はなめし皮で包んで作ったという。のち、ツヅラフジで作ったものはすたれた。近世に入って万年葛籠などとよばれたものは、竹、ヒノキ製に紙をはり渋や漆を塗ったもので、元禄(1688‐1704)の初め、神田鍋町のつづら屋甚兵衛がはじめて作りだしたという。
■お目見え(おめみえ);めみえ。奉公人が、その家にまず試みに使われること。御目見得奉公。
■一張羅(いっちょうら);持っている着物の中で、一番上等のもの。唯1枚の晴着。我々子供の時分、普段着と違って大事なときに着る唯一の着物。
■主家(おもや);(分家・支店に対して)
本家(ホンケ)・本店の意。
■カザ;におい。かおり。動詞はカザガク。
■仏を作って眼を入れず;仏作っても開眼せねば木切れも同然。 (仏作って魂入れず)仏像を作っても、作った者が魂を入れなければ、単なる木や石と同じであることから。
転じて、物事は仕上げや一番肝心なものが抜け落ちていることのたとえ。 最も重要であり、それが欠けたときは作った努力もむだになるということ。
■マンダラ;まだら。種々の色または濃淡の入りまじっていること。また、そのもの。ぶち。むら。
■喉笛(のどぶえ);喉の気管の通ずる所。ふえ。 番頭さんはおなべさんに話をしたら逆上されて、のど笛を噛み切られるのではないかと心底心配していた。猫捕るだけの話かいな、と一安心。
■四谷怪談(よつやかいだん);江戸時代後期の歌舞伎狂言。世話物。5幕11場。四世鶴屋南北作。文政8年(1825) 江戸中村座初演。怪談物の代表作。寛文年間 (1661~73) 四谷左門町に住んでいた田宮又左衛門の娘お岩が嫉妬によってたたりをなしたという巷説などを素材としたもの。『仮名手本忠臣蔵』の世界を借り、また南北自身の前作『謎帯一寸徳兵衛 (なぞのおびちょっととくべえ) 』などの趣向を取入れている。お岩が夫の伊右衛門に毒薬を飲まされて次第に容貌がくずれてゆく「髪すき」の場面や、伊右衛門に殺された小仏小平とお岩の死体が戸板にはりつけられて堀からあがる「砂村隠亡堀」の場などが凄惨さで名高い。
「四谷怪談」戸板返しの場。豊原国周画。江戸東京博物館蔵。 第3幕「砂村穏亡堀」の山場。お岩の夫民谷伊右衛門がお岩と小仏小平を戸板の裏表に釘付けされ川に捨てられたが、砂村に釣りに行った時、その戸板が浮かび上がる。この戸板絵の裏側には小仏小平が描かれている。
■暖簾分け(のれんわけ);長年忠実に勤めた奉公人に、店を出させて同じ屋号を名のることを許す。その際、資本を援助したり、商品を貸与したり、顧客を分けたりする。
■益体もない(やくたいもない);役に立たない。しまりがない。また、そのような者。
■猫被ってた(ねこかぶってた);本性を包み隠して、おとなしそうに見せかけること。また、そういう人。羊の皮を被った狐。
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