落語「七度狐」の舞台を行く 二代目桂小南の噺、「七度狐」(しちどぎつね)より
■二代目 桂 小南(かつら こなん);(1920年1月2日
- 1996年5月4日)は、東京で上方落語を演じた落語家。本名は谷田 金次郎(たにた きんじろう)。1939年(昭和14年)、三代目三遊亭金馬の内弟子となり、山遊亭金太郎を名乗る。入門当初は金馬が東宝専属であったため、寄席の定席には出られず、主に東宝名人会で前座を務めていた。太平洋戦争中は召集を受け、1945年(昭和20年)に復員した。1951年、定席の高座に出るために金馬の口利きで二代目桂小文治の身内となる。1958年(昭和33年)9月、八代目桂文楽の好意で三代目桂小南を襲名して真打となった。落語芸術協会所属。出囃子は『野崎』。
■出典;『七度狐』(しちどぎつね/ななたびきつね)または『七度狐庵寺潰し』(しちどぎつねあんでらつぶし)は上方落語の演目の一つで、原話は、寛政10年(1798年)に出版された笑話本・「無事志有意」の一遍である『野狐』。道中噺『東の旅』(本題『伊勢参宮神乃賑』)の一編。
■喜六・晴八(きろく・せいはち);上方落語ではいいコンビの二人です。喜六は漫才で言うボケで、晴八はツッコミです。江戸落語では、八っつあん・熊さんか、与太郎を交えた二人組なのでしょう。
■茶店(ちゃみせ);中世から近代にかけて一般的であった、休憩所の一形態。休憩場所を提供するとともに、注文に応じて茶や和菓子を提供する飲食店、甘味処としても発達した。
左、木曾街道・上尾宿、英泉画。 右、東海道五十三次・袋井、広重画
■蒟蒻の煮た物(こんにゃくのにたもの);弁当おかずにぴったりの「こんにゃくの甘辛味の炒り煮」。
蒟蒻料理。二種。
■高野豆腐(こうやどうふ);だしをたっぷり含んだ高野豆腐の煮物は、どんな季節でもおいしいもの。少し甘めに味付けをすることが美味しく作るコツです。
高野豆腐、料理二種。
■お芋の煮たの(おいものにたの);里芋のトロンとした食感がたまらない。
芋料理二種。
■牛蒡の煮たの(ごぼうのにたの);
牛蒡料理二種。
■魚の煮たの(さかなのにたの);
煮魚料理二種。茶店には当然、焼き魚もあったでしょう。目刺しとか塩鮭等です。
■地酒(じざけ);特定の地域でつくられる日本酒。その土地の酒。一般に、全国的に流通する大手メーカーの製品や、日本酒の主産地である兵庫県の灘や京都府の伏見以外でつくられる日本酒をいう。
造り酒屋は純粋に酒を造りそれを売っていた所という概念で、規模も必ずしも大きくなく、ときには蔵人が一人で営んでいて、場所も都市の中だけでなく農村部や山間部にも多かった。かなりさびれた街道沿いにも造り酒屋が点在していた様子が昔の紀行文などからうかがえる。
蔵や店舗は自前の所有であったが、たとえば、関東地方から東北地方に点在した江州蔵(ごうしゅうぐら)のように、はるか遠方に住む経営者が資本を持ち、派遣された蔵人が必要に応じて土地の労働者を季節雇用して営んでいるところもある。
江戸幕府の酒造統制や明治政府の造酒税増税に翻弄され、衰滅したり、再生したり、新しいものが生まれたりした。
バブル経済以後の地酒復興期における零細な地方蔵のように、現在もその流れは細々と続いている。
■酒の中に水入れたな。いや~、水の中に酒入れた;日本酒は通常、焼酎やウイスキーのように呑むとき水で割ることはありません。それは蔵元で出来たとき、既に飲みやすいアルコール濃度になっているからで、改めて水で薄めることはしません。しかし、江戸時代や明治・大正・昭和の戦前までは、酒屋さん(酒の小売店)で、自分の独特なブレンドや割り水(加水)をして販売していました。その方が旨いからとか、呑みやすいとか、安価になるとか、色々理由はありますが、それが現実でした。酒屋さんは樽で仕入れ2~3種の酒をブレンドしたのですが、今ではビンにシールされた状態で販売されますから水っぽい酒は売ることが出来ません。飲み手も価格をみればそんなに苦情は出ませんし、元の味が分からないので、言いようが有りません。薄めすぎると、「水くさい酒」になりますが、もっと薄めると「酒臭い水」になってしまいます。
■すり鉢(すりばち);大きな丼状の鉢で、内側にヤスリ状の溝が切ってあって、すりこ木で食材をすりつぶす。
■イカの木の芽合い(いかのこのめあい);「木の芽」とは、春先に暖かくなってくると木の枝先に新芽が芽吹き始めます。一般的に春先に芽吹く樹木の芽のことを「木の芽(きのめ)」といいますが、料理の世界では「山椒(さんしょう)」の芽を指して「木の芽」といいます。
山椒は、ミカン科の落葉低木で別に「ハジカミ」とも呼ばれていますが、日本原産の樹木であり広く北海道から鹿児島まで分布しています。ただ、山椒には雄株と雌株があり、実が採れるのは雌株だけです。
イカの木の芽合い二種。
■麦畑(むぎばたけ);麦を育てている畑。コムギとオオムギとをまとめて麦とよび、明治以降はその後伝来したライムギやエンバクなどをも麦に含めるようになった。この「麦」という概念は欧米にはなく、麦に相当する英語もない。麦類は中央・西アジアの乾燥地帯が原産で、秋に芽生え、越冬して初夏に開花し結実する冬作物である。このため麦類は日本では稲作のあとの水田や夏作物のあとの畑に、裏作物として栽培され、土地利用率を高め、食糧生産を高めることに寄与してきた。コムギ、オオムギは人類が農耕を始めたときからのもっとも歴史の古い作物であり、日本へもイネと同じかあまり遅れないころに大陸から伝来して、栽培が始められた。なおライムギとエンバクは、原産地付近で、麦畑の雑草からしだいに作物化されたといわれる。
麦畑。こんな中を歩かれたらお百姓さんも怒りたくなります。
■野宿(のじゅく);古来より旅人が宿がない時代や、宿が見つからない場合、金銭的余裕のない場合などに戸外で睡眠をとりつつ夜を明かすことが少なからずあった。日本における旅宿の起源はは古代末期あるいは中世初期ころとされ、全国的に宿泊施設が整備されるのは近世に至ってからです。したがって、旅人が夜露をしのぐすべもないままに夜を明かす時代は相当に長かったと考えられます。古代では王侯貴族でさえも野宿を余儀なくされたことが「草枕」が旅の枕詞とされていることからもうかがえます。江戸時代に至っても金銭的余裕がない俳人などはしばしば他家の軒下を借り仮眠した。現代においても、登山者や旅好きの若者、ライダー、遍路の一部などが好んで行う。遍路や僧侶の場合は、功徳が目的の場合もある。野外で寝ることで普段見ることのない夜空を見上げたり、風に吹かれ自然を体得したりすることで、心地よさや風流心を満足させられることから、ライフスタイルの表明として行われる場合もある。
■オオカミ(狼);イヌ科イヌ属に属する哺乳動物。広義には近縁種も含めることがあるが、通常はタイリクオオカミ(ハイイロオオカミ、Canis lupus)を指す。多数の亜種が認められている。同属の近縁種としてアメリカアカオオカミ、コヨーテ、アビシニアジャッカル(エチオピアオオカミ)などがいる。日本で古来「狼」と呼ばれてきた動物は絶滅したとされるニホンオオカミであり、タイリクオオカミの一亜種と見なされる。
科学博物館に展示されている絶滅最後のニホンオオカミの剥製。 北斎漫画から狼。
■山寺(やまでら);噺の中の山寺は、山の中に有る小さな古びた寺です。
■庵主(あんじゅ);僧で庵室(木で造り屋根を草で葺(ふ)いた、小さな仮の家)を構えている者。特に、尼寺の主である尼僧。
■畦道(あぜみち);田と田の間の細い道のこと。稲作農業において、水田と水田の境に水田の中の泥土を盛って、水が外に漏れないようにしたものである。畦は、水田の区画を成すと同時に、泥土のきめ細かさによって水漏れを防ぐ方法でもある。隣の水田との土地の境界でもあり、水田を回る際の道としての役割も持っている。
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