落語「ふぐわ口」の舞台を行く 三代目三遊亭金馬の噺、「ふぐわ口」(ふぐわくち)より
■年の瀬(としのせ);「越すに越されず 越されずに越す大晦日」 つまり、2月3日の節分は、今で言うところの「大晦日(おおみそか)」にあたるわけです。節分の日には、神社やお寺で「節分会(せつぶんえ)」「節分祭」や「厄除け祈願祭」などが行なわれますが、これは、旧暦の大晦日にあたる2月3日に一年の厄を祓って新しい一年を迎えましょうという古くからの風習が今に残ったものです。
■借金取り;掛けの支払いが、どうしても精算しなければならないのが、盆・暮れの年二回です。特に歳末は、商家にとっては掛売りの貸金が回収できるか、また、貧乏人にとっては、時間切れで逃げ切って踏み倒せるかが、ともに死活問題です。むろん、普段掛売りするのは、同じ町内の酒屋・米屋・炭屋・魚屋などなじみの生活必需品に限られます。落語では結局、うまく逃げ切ってしまうことが多いのですが、現実はやはりキビしかったようです。
■同じような噺;年越しに苦労する人達、
金馬は別題の話「狂歌家主」をやっています。この噺の中にも家主が出てきて、家主が主人公のひとりで、狂歌で太刀打ちします。たっぷりと狂歌の噺が続きますが、この噺では時間の関係(?)でダイジェストになっています。
■厄祓いの文句;米朝は「あぁ~ら目出度や、目出度やな、目出度いことで祓うなら。鶴は千年、亀は万年、浦島太郎は三千歳、東方朔(と~ぼ~さく)は九千歳(くせんざい)、三浦の大介(お~すけ)百六つ。かかる目出度き折からに、如何なる悪魔が来よ~とも、この厄払いが引っ掴み、西の海へさらり、厄(やっく)払いまひょ」。
池田伊丹(いけだいたみ)=京都の名酒所。
新川新堀(しんかわしんぼり)=江戸の上方からの下り酒の集荷地。永代橋の際にあって、今でも関西の酒問屋が多く集まっている。
泡盛(あわもり)=沖縄特産の焼酎。多くタイ産の砕米を原料とし、黒麹(クロコウジ)菌で麹にし、これに水と酵母とを加え発酵させ蒸留する。長年熟成したものを沖縄では古酒(クウス)といい芳醇。アルコール30~40%を含む。
焼酎(しょうちゅう)=蒸留酒の一種。日本酒製造の際の醪(モロミ)または酒粕を蒸留したもの。または米・麦・粟・黍(キビ)・稗(ヒエ)・玉蜀黍(トウモロコシ)・甘藷・馬鈴薯・糖蜜などを原料として造り、水で薄めたもの。飲料とし、また、各種の酒類製造の原料に用いる。
ウィスキー=大麦・ライ麦・トウモロコシなどを麦芽で糖化し、酵母を加えて発酵させ、蒸留した酒。オーク樽に貯蔵して熟成する。
■狂歌(きょうか);社会風刺や皮肉、滑稽を盛り込み、五・七・五・七・七の音で構成した諧謔形式の短歌(和歌)。
「白河の清きに魚のすみかねて もとの濁りの田沼こひしき」
大田 南畝(おおた なんぽ);(寛延2年3月3日(1749年4月19日) - 文政6年4月6日(1823年5月16日))は、天明期を代表する文人・狂歌師であり、御家人。
勘定所勤務として支配勘定にまで上り詰めた幕府官僚であった一方で、文筆方面でも高い名声を持った。膨大な量の随筆を残す傍ら、狂歌、洒落本、漢詩文、狂詩、などをよくした。特に狂歌で知られ、唐衣橘洲(からころもきっしゅう)・朱楽菅江(あけらかんこう)と共に狂歌三大家と言われる。南畝を中心にした狂歌師グループは、山手連(四方側)と称された。
■晦日(みそか);月の第30番目の日。転じて、月の末日をいう。尽日(ジンジツ)。つごもり。
■歌舞伎の『酒井の太鼓』(さかいのたいこ);新歌舞伎十八番の一。時代物。4幕。別名題《世響太鼓功(よにひびくたいこのいさおし)》。通称《酒井の太鼓》。河竹黙阿弥作。1873年3月東京村山座初演。配役は酒井左衛門・鳥井忠広を河原崎権之助(のちの九世市川団十郎)、鳴瀬東蔵を五世尾上菊五郎。《三河後風土記》に材をとる。武田勢にかこまれた浜松城の徳川方が敗色濃くなったとき、城を預かる酒井左衛門忠継がわざと大酔、城門を開き、篝火(かがりび)をたき雲霞のごとき武田勢を眼下にして、臆せず城の櫓の太鼓を打ったので、城門まで押しよせた馬場美濃守は城中に深謀あるを信じて引きあげる。「後風土記」の逸話を脚色したもの。
月岡芳年画 『酒井忠次時鼓打之図』
■喧嘩(けんか);争い。いさかい。
■小唄や端唄(こうたやはうた);
小唄=もともと端唄から派生した俗謡である。 一般には江戸小唄とされる端唄の略称。略称として定着したのは、明治・大正年間である。 ほかに現代小唄・清元小唄・常磐津小唄・義太夫小唄(豊本節)・新内小唄などがある。
端唄は撥を使うのに対して小唄は爪弾きである。 弾き方は爪弾きと呼ばれているが、正式には爪は糸に当ててはならず、人差指爪先の肉で弾く。
端唄は平坦に歌うのに対し小唄は技巧的に唄う。 しかし小唄の特徴である粋さを出すためにはこの技巧が鼻についてはならない。
演唱の場は主に、お座敷(4畳半)が多かった。 撥を使用すると音色が大き過ぎる為に自然と爪弾きとなった。 三味線は端唄と違い中棹を使用しているが、これは舞台など広い場所での演奏機会が増えるにつれ、 音のより大きい中棹三味線が使われるようになった為である。 使用する糸は端唄より太く、駒は端唄よりも大きな木製(桑、紅木、竹など)の木駒を主に使用するが 象牙で作った3分8厘の駒を使用する事もある。 呟く様に軽妙に粋に唄うのが特徴であったが、演奏場所が広くなるにつれ変化してきている。
演奏時間はおよそ一分半から三分程度。 長くとも五分以内で、詞の内容は遊里物・遊女物(遊里のお色気を扱ったもの)、慕情物・情痴物(市井のお色気を扱ったもの)、芝居物・役者物(芝居や役者を題材にするもの)、バレ唄(諷刺・洒脱のきいたもの)などがある。
■フグは口ッ;この噺「ふぐわ口」の題名はこのオチから来ています。
左、トラフグ。歯が4(テトラ)本あり、河豚毒をテトラドキシンと言う。 右、河豚毒を取りに除いた美味フグちり。
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